第98回 猿熟れ馬馴れてようやく殻を脱す——功成り行満ちて真如に見ゆ
師弟が玉真観で金頂大仙に迎えられ沐浴して霊山へ登る。凌云渡で接引佛祖の無底の船で渡り三蔵が肉身を脱する。雷音寺で如来に謁見し経典を授かるが無字の白紙だったため抗議する。阿難と迦葉に紫金鉢盂を渡してついに五千零四十八巻の有字真経を受け取る。
寇員外が蘇生した後、再び幢旗・鼓楽・僧道・友人が集まって師弟を送り出した。西へ進む道は以前と異なり、琪花瑤草・古柏蒼松が連なり、家々で仏を奉じ、山には修行者が坐禅し、林には経を誦む旅人がいた。真の仏国の境界に入ったのだった。
六七日進むと、高楼幾層の建物が見えてきた。三蔵が「悟空、あの素晴らしい場所は何か」と言うと、悟空が「師父、偽の仏像の前ではすぐに拝もうとするのに、本物の前では馬を降りないとは」と笑った。三蔵が慌てて飛び降りると、もう楼閣の門前に着いていた。
道童が「東土から取経に来た方ではないですか」と出迎えた。悟空が「師父、これは霊山の麓、玉真観の金頂大仙です。わしらを迎えに来てくれた」と言うと、三蔵が礼をした。大仙が笑って「実は観音菩薩に二三年で来るとだまされていました。十年待ちましたが、今年ようやく」と言い、香湯を用意して師弟を沐浴させた。
翌朝、三蔵が錦襴袈裟を纏い毗盧帽を戴いて金錫杖を手に出発した。大仙が「雲の路ではなく地の道から登られよ」と説明しながら案内し、観の後門から灵山の道へ導いた。
大仙が「あの五色の祥光と千重の瑞霭が灵鷲の高峰、仏祖の聖境です」と指すと、三蔵が跪こうとした。悟空が「師父、まだ拝む場所ではありません。山は見えても遠い」と笑った。大仙が「四位とも福地に入られました。私はここで」と別れを告げた。
悟空が三蔵を先導してゆっくりと登ると、幅八九里の活水が轟々と流れていた。三蔵が「道を間違えたか。この川幅では渡れない」と怖じると、悟空が「あちらに橋があります」と指した。
橋の扁額に「凌云渡」と刻まれていたが、橋とは一本の丸太——独木橋だった。三蔵が「人が渡れる橋ではない」と足が震えた。悟空が「わしが渡ってみせます」と飛び上がり、丸太の上をひらりと走り渡って向こう岸から手を振った。三蔵が首を振り、八戒が「細くて滑る。歩けない」と言う。
その時、下流から一人が舟を漕いで近づいてきた。三蔵が「舟が来た」と喜ぶと、悟空の火眼金睛が見た——接引佛祖、南无宝幢光王仏だ。しかし黙って「渡れ、渡れ」と声をかけた。
舟が岸に着くと、底がない——無底の舟だった。三蔵が「底のない舟で人を渡せるか」と問うと、仏祖が答えた。「この舟は鴻蒙の始まりより変わらず。波風があっても揺るがない。六塵に染まらず万劫を渡る。底なき舟で海を渡り、古今の人々を済度してきた」
悟空が「師父、この舟は安定しています。乗りなさい」と言い、三蔵を押すと、三蔵が足を踏み外して水に落ちかけた。接引佛祖がすかさず引き上げた。八戒・沙悟浄も馬と行李とともに乗り込んだ。
仏祖が舟を漕ぎ出すと、上流から一体の死骸が流れ下ってきた。三蔵が驚くと、悟空が「師父、あれは師父ですよ」と言い、八戒が「あなたです、あなた」と言い、沙悟浄も「あなたですよ」と言い、仏祖も「あなたです。よかった、よかった」と号を打った。
舟がしずかに向こう岸へ着くと、三蔵が軽々と岸に跳び上がった。脱胎換骨——肉身から解き放たれた真の身だった。
師弟が灵山の頂上に登ると、雷音古刹が現れた。巧峰怪石、仙猿白鶴、彩鳳青鸾、金瓦玉砖——天王殿に霞光、護法堂に紫焰が輝いていた。
四大金剛が「聖僧が来られたか」と迎え、内へ伝達が走り、大雄殿の神僧が如来に「唐朝の聖僧が真経を求めに参りました」と奏上した。如来が大いに喜び、八菩薩・四金刚・五百阿羅漢・三千揭谛・十一大曜・十八伽蓝を左右に並べ、唐僧を召した。
三蔵が悟空・八戒・沙悟浄と馬と担を引いて大雄宝殿の前に進み、如来に向かって深く礼拝した。通関文牒を捧げると、如来が目を通してから返した。三蔵が「弟子玄奘、東土大唐皇帝の旨を奉じて真経を求めてまいりました。衆生を済度するため、早く故国へ帰る許しをいただきたい」と申し上げた。
如来が南瞻部洲の民の多くの罪業と輪廻の苦を説き、三蔵をまずご馳走で歓迎した後、阿難・迦葉に命じて宝閣の経典を授けさせた。
阿難と迦葉が「供え物はないか」と問うと、三蔵が「貧僧には何もない」と答えた。悟空が怒って「如来に告げに行く」と言うと、阿難が「こちらへ来い」と一切を手渡した。
師弟が山門外を出て経巻を確認すると——全て白紙、字が一文字もない。三蔵が「東土の人間は福がないのか。字のない経を持って帰れば唐王を欺いた罪になる」と嘆くと、悟空が「阿難・迦葉が賄賂なしで白本を渡した。如来に訴えよう」と言い、師弟が再び山へ引き返した。
如来が「汝等は受け取ったばかりのものを持ち帰れ」と笑い「阿難・迦葉が賄賂を求めたのは知っている。しかし経は軽く渡してはならない。無字の経は真の経だが、東土の人は理解できないから、文字のある経を渡しなさい」と言い、阿難・迦葉に「有字の真経を渡せ」と命じた。
三蔵が唐王から賜った紫金鉢盂を差し出すと、阿難が受け取り、二人が経を一一取り出して渡した。五千零四十八巻——一藏の数。師弟が馬と担に積んで如来の前に礼拝した。
如来が「この経の功徳は量り知れない。三乗の源流であり万化の奥義を含む。東土に帰ったら軽んじてはならない。沐浴斎戒なしに開いてはならない」と告げた。
師弟が門を出た後、観世音菩薩が如来に申し上げた。「弟子が金旨を奉じて東土へ取経の人を求めに行ったのは十四年前。五千零四十日。あと八日、数が足りません。聖僧を八日以内に帰国させ、また連れ戻せば、藏数が揃います」
如来が「よく言った」と喜び、八大金剛を呼んで「神威を発揮して聖僧を東土へ護送し、真経を伝え終えたら八日以内に連れ戻せ」と命じた。
金剛が追いついて「取経の方々、わしらについてきなさい」と呼びかけると、師弟は身が軽々と天に浮かんで雲に乗った。
功満ち行満ちて今こそ仏地を踏み——九転の難、終に霊山に帰す。
底なき舟、凌云の渡しを越えて——真如を見ること、この一刻にあり。