西遊記百科
🔍

第93回 給孤園にて古因を問う——天竺国の朝廷にて王偶に遇う

布金禅寺の給孤独園を訪れた師弟一行は、老住持からある秘密を明かされ、天竺国の都では偽の公主による奇妙な求婚に巻き込まれることになる。

孫悟空 猪八戒 三蔵法師 沙悟浄 布金禅寺 給孤独園 天竺国 鶏鳴関 百脚山 絣球 偽公主

慈云寺の僧たちが夜明けに目を覚ますと、師弟四人の姿がなかった。「引き止めることも、見送ることも、お願いすることもできなかった。生きた菩薩をこうして見送ってしまった」と嘆き、城中の人々が空に向かって手を合わせた。

師弟は風を食み露を宿しながら半月ほど進んだ。高い山が現れると三蔵が「また山か、気をつけよ」と怖じけた。悟空が「この辺りはもう仏の地に近い。妖邪などおりません。ご安心を」と笑った。

「悟空、また烏巣禅師の心経を忘れたのか」と悟空が言うと、三蔵が「般若心経は片時も忘れたことはない。逆から唱えても言える」と答えた。「師父は唱えるだけで、解がないのです」「わしが解得るか。お前は解けるか」「解けます、解けます」と言ったきり、二人とも黙った。

八戒が笑い転げ、沙悟浄が「あの兄貴は大きな話をして師匠を歩かせているだけ。棒を振れるだけで経を講じるなど」と言うと、三蔵が「悟空が解得るとは、言語文字を超えた真の解だ」と庇った。


路の脇に一寺が現れた。大きくも小さくもなく、瑠璃の碧瓦と八字の紅壁。扁額には「布金禅寺」、「上古遺跡」と書かれていた。

三蔵が馬上で「布金……もしや舍衛国の界か」と呟いた。八戒が「師父、私もわかりましたよ」と言うと、三蔵が「これは仏が舍衛城の祗樹給孤独園で説法された古事だ。給孤独長者が太子の園を金砖で敷き詰めて買い取り、仏を招いた——だから布金寺というのだ」と説いた。八戒が「では金砖を一枚持って帰りましょうか」と笑い、皆も笑った。

寺に入ると、威儀ある禅僧が出迎えた。三蔵が事情を告げると一泊を快諾し、斎食が振る舞われた。八戒が饅頭と粉湯を腹に収めていると、沙悟浄が「礼儀を守れ」と耳に囁き、八戒が「礼儀礼儀、腹は空っぽだ」と叫んだ。


月が出ると三蔵と悟空が月下を歩いた。老いた住持——百五歳——が現れ、「東土のお方ですな」と声をかけた。寺の後方へ案内すると、給孤独園の礎石が残っていた。三蔵が合掌して詠嘆した後、どこからか女の泣き声が聞こえた。

老住持が人払いをして、三蔵と悟空だけに向かって跪いた。三蔵が驚いて「なぜ礼を」と問うと、老住持が静かに語り始めた。

「去年の今日、この祗園の跡地に一陣の風が吹き、美しい女子が舞い降りてきました。問うと『天竺国の国王の公主です。月下に花を見ていたところ風に攫われました』と申した。私は衆僧の中で汚されてはと、一室に閉じ込めて監房に見せかけ、门に小穴だけ開けて食事を渡しました。昼間は狂人を装って糞尿の中に臥し、夜になると父母を恋しんで泣く——聡明な女子です。城中で公主のことを探っても何も変わりがなく、つまり偽物が入れ替わっているのです。どうかお力をお貸しください」

三蔵と悟空は深く心に刻んだ。


鶏鳴の刻になると、行商たちが一斉に立ち上がった。寺僧たちが朝食を用意しており、八戒が蒸し饅頭を平らげた。老住持が悟空の耳元で「悲しい事、どうかお忘れなく」と言うと、悟空が「お任せあれ。声を聞いて理を察し、顔を見て真偽を見分けます」と答えた。

行商たちとともに鶏鳴関を抜け、巳の刻には天竺国の城壁が見えてきた。

虎踞龍盤の城、鳳楼麟閣の彩。御溝に水流れ帯のごとく——国土豊かに衣冠明らかなり。

東市の会同館駅に入ると、駅丞が出迎えた。事情を聞くと「ちょうど今日、公主が絣球を投げて婿を選んでいます。十字街の彩楼です。倒換も今がよいでしょう」と教えた。

三蔵が「行こう」と言うと、悟空が「師父は先ほど先母様も絣球で縁を結んだとおっしゃいました。それに布金寺の老住持の話もある——真偽を見届けましょう」と勧めた。


十字街の彩楼の下へ近づくと、楼上に絢爛たる刺繍の女子たちが並び、その中心に公主が香を焚いて天地に祈っていた。正午の刻、公主が人ごみの中の三蔵を見つけ——絣球を手に取り、自ら三蔵の頭上へ投げた。

三蔵が驚いて毗盧帽を押さえると、球が袖の中に転がり込んだ。楼上から「お坊様に当たった」と声が上がり、人々が群がった。悟空が一声叫んで身を三丈に伸ばすと、人々が蜘蛛の子を散らすように逃げた。

宮女たちが三蔵を楼前へ連れていき、公主と共に宝輿に乗って朝廷へ向かった。


国王の御前で三蔵が事情を訴えた。「貧僧は出家者で仏子として玉葉金枝の配偶にはなれません。関文を倒換して霊山へ参らせてください」と懇願すると、国王が「千里の縁が糸で結ばれたのだ。公主の意はどうか」と公主に問うた。

公主が「嫁いだ先に従うもの。誓いの通りに招いた縁です。どうぞお願いします」と跪いた。国王が喜んで婚礼の日取りを選ぶよう命じた。

三蔵が「弟子たちに一言伝えたい」と願うと、国王が「徒弟はどこにいるか」と問い、会同館へ迎えを出した。三蔵は立って控えながら待った。


悟空が駅へ戻ると、八戒が「師父はどうした」と聞いた。「師父が慶事に与ったのだ」と悟空が笑うと、八戒が「早く言ってくれれば彩楼の下に行ったのに——絣球が当たれば公主が招いてくれたのに」と跌脚した。沙悟浄が「汚い顔で何を言うか」と呆れた。

駅丞が「宮使が参りました」と報告すると、宮使が震えながら召状を差し出した。「師父が婚礼に遭われたので、ご一緒に入朝を」と言い、悟空たちが行李と馬を率いて朝廷へ向かった。

絣球は縁か禍か——真偽の公主、城中に潜む。
行者の火眼金睛、まだ試されず——天竺の難、始まりたり。