西遊記百科
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第92回 三難の犀牛、心月を降す——四木の禽星、邪魔を収む

悟空が天宮で四木禽星の派遣を請い、角木蛟ら四星が西海で三頭の犀牛を撃破して師弟を救い出し、金平府の因習を正して旅を再開する。

孫悟空 猪八戒 三蔵法師 沙悟浄 玄英洞 四木禽星 角木蛟 斗木獬 奎木狼 井木犴 辟寒大王 辟暑大王 辟尘大王 金平府

玄英洞の外に一人残った悟空は、夜の空を見上げて思案した。「三匹の犀牛、力は並大抵ではない。師匠と八戒・沙悟浄の三人が洞の中に閉じ込められている。このまま一人で攻めても埒が明かぬ。天宮へ行って助けを求めるしかない」

悟空が筋斗雲で南天門をくぐり、霊霄宝殿へ飛んだ。太白金星が出迎えて「大聖、また何事ですか」と問うと、悟空が「金平府の玄英洞で三匹の妖怪が師匠と弟子二人を捕らえた。犀牛の精と見当をつけたが、何か天宮の者をお貸しいただけるか」と答えた。

太白金星が頷いて「犀牛の精を降すには四木禽星がよろしい。角木蛟(つのきみずち)・斗木獬(ひしきかい)・奎木狼(けいきろう)・井木犴(いのきかん)の四星——木に属する四つの動物の星宿です。玉帝に申し上げましょう」と言い、ともに玉帝の御前へ向かった。


玉帝が事の次第を聞いて「金平府の三犀牛は長年の悪行があった。四木禽星を派遣して収めよ」と御旨を下した。

天宮の宿舎から四星が甲冑を帯びて出てきた——角木蛟は龍の頭に木の鱗、斗木獬は獬豸(かいち)の形、奎木狼は狼の顎に鋭い爪、井木犴は猫に似た小柄な体に尖った耳。四星が悟空に「大聖、先に行かれよ。我らが後に続く」と言い、各々の雲を踏んで青龍山へ向かった。


夜が明けかけた頃、四木禽星と悟空が玄英洞の前に陣を布いた。

悟空が洞口を棒で叩くと、辟寒大王が「昨夜は八戒と沙悟浄を捕らえた。行者一人でどうする」と太い角を振って洞外に出てきた。辟暑・辟塵の二魔も続いて出てきた。

角木蛟が前に出ると、辟寒大王が「お前は何者だ」と問うた。「天宮の角木蛟。汝ら犀牛の精、長年金平府の人民を惑わし聖僧を傷つけた罪は重い。素直に縛につけ」

三魔が聞く耳を持たず一斉に突進した。四木禽星がそれぞれ相手取り、悟空が金箍棒で補佐した。


正午まで戦うと三魔が互いに目配せして「今日はまずい。逃げるぞ」と一陣の黒風に変じて西の方角へ飛んだ。

「西海へ逃げた」と角木蛟が言うと、四星と悟空が追いかけた。西海の水辺まで来ると三魔が海中へ潜り込んだ。

井木犴、お前の出番だ」と角木蛟が言った。井木犴が「わかった」と海に飛び込んだ。水中は井木犴の得意な場所——猫に似た四肢が水をかき分けて深海へ潜っていった。

辟寒大王が海底で息を潜めていたところへ、井木犴が一気に喉元に噛みつき、深海で激しく暴れた。しばらくして血が海面に赤く滲み出て、井木犴が辟寒大王の遺骸を咥えて浮き上がってきた。

辟暑大王と辟塵大王が別の方向へ逃げようとしたところを、斗木獬と奎木狼が海面で待ち受けて縄をかけた。二魔が縛られて空に引き上げられた。


悟空が洞中に入って三蔵・八戒・沙悟浄を縄から解き放った。三蔵が「悟空、助けに来てくれたか」と涙をこぼした。八戒が「師兄、今回は長く待たせおって」とぼやき、沙悟浄が「とにかく無事でよかった」と言った。

四木禽星が捕らえた辟暑・辟塵の二魔と辟寒の遺骸を前に並べると、悟空が「師匠、三匹の犀牛でした。毎年金平府の元宵に仏陀に扮して酥合香油を盗み、今年は師匠まで攫った悪魔どもです」と説明した。

三蔵が「四星殿方、師弟の命をお救いいただきまことにありがとうございます」と礼拝した。四木禽星が「大聖のご縁でお役に立てました。我らは玉帝への報告がありますので先に失礼します」と雲に乗って天へ帰った。

八戒が「また洞を焼かなければ」と言い、薪を集めて玄英洞に火を放った。三匹の犀牛が長年こもっていた洞が、黒煙を上げて崩れ落ちた。


師弟四人が金平府の慈云寺へ戻ると、住持と府内の官員たちが出迎えた。辟暑・辟塵の二犀牛を縄で引きずって来ると、府尹が「三仏は実は妖怪でございましたか」と仰天した。

悟空が「長年の悪行です。角を鋸で切り落として供えるがよい。二匹は府の獄に入れておけ。わしらが天竺国へ着いたら天兵を使わして始末させる」と命じた。

府尹が職人を呼んで二頭の犀牛の角を鋸で挽き落とした。角は金平府の廟に봉納され、二匹は足枷をはめて獄に入れられた。

府尹が宴を設けて師弟をもてなし、「これより毎年の金灯節は廃止し、その費用を貧民に施します」と誓った。三蔵が「よき決断」と褒め称えた。


師弟一行は慈云寺に一月余り世話になった後、夜明け前にそっと出発した。住持が後を追いかけて「なぜ夜中にお発ちに」と問うと、三蔵が「引き留めていただくと情が移って立ち去れなくなります。どうかお体に気をつけて」と手を振って前へ進んだ。

金平府の城門が後ろに遠ざかり、師弟の影が暁の霞の中に消えていった。

三犀牛、年ごとに燈油を詐り——四木星、海底に悪魔を滅す。
金平の一難、これにて収まり——心月孤輪、正道を照らし行く。