西遊記百科
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第89回 黄獅精、鈀宴を虚設す——金木土の計、豹頭山を闹す

鍛冶場から三つの神兵が消える。悟空が蝶に変じて偵察し黄獅精の釘鈀宴を知る。三人が狼頭鬼に変装して虎口洞に潜入し兵器を取り返す。九灵元聖が怒って仲間を率い玉華城へ復讐に向かう。

孫悟空 猪八戒 三蔵法師 沙悟浄 黄獅精 豹頭山 虎口洞 九灵元聖 刁鑽古怪 玉華州

夜明けに鍛冶師たちが起き出してみると、炉の棚に三つの神兵の姿がない。慌てて三王子に知らせると、王子が暴紗亭へ飛んで行って「師父方が収めましたか」と問うた。悟空が「収めていない」と飛び起き、炉の棚を確かめると——釘鈀も如意棒も降妖杖も跡形もなかった。

八戒が「鉄匠が盗んだに決まっている、打ち殺せ」と怒鳴ると、鍛冶師たちが額をついて「凡人の我らにあの神兵を持てるはずがない。命をお助けを」と泣いた。老王が「この城で五代を重ねてきた。城中の者が大聖の神兵を盗むなど考えられぬ。別の見方をお願いしたい」と言うと、悟空が「この州城の四方に妖怪のいる山はないか」と問うた。

「北に豹頭山という山があり、虎口洞という洞窟があります。仙人とも虎狼とも妖怪とも言われておりますが、はっきりしたことは」と王子が答えると、悟空が「疑いなしにそこだ」と言い、「八戒と沙悟浄は師匠と城を守れ」と命じて一声叫んで姿を消した。


豹頭山は城から三十里しかなく、またたく間に到着した。山頂から妖気が漂っている。悟空が蝴蝶(蝶)に変じて山の背後へ飛ぶと、二匹の狼頭妖怪が大路を喋りながら歩いていた。

「兄貴、うちの大王は最近ついてるな。先月は美人を一人手に入れて洞中で楽しんでいる。昨夜は三つの神兵を手に入れた——どれも値のつけられない宝だ。明日は釘鈀嘉会(釘鈀祝賀の宴)を開くから、わしらも相伴にあずかれる」

悟空が素早く前に出て元の姿に戻り、路の交差点に立ちはだかった。狼頭妖が近づくと、悟空が呪水を一口噴いて「唵吽吒唎」と唱えて定身法をかけた。二匹がぴたりと止まって動けなくなった。懐を探ると銀子二十両と、それぞれ「刁鑽古怪(ちょうさんこかい)」「古怪刁鑽(こかいちょうさん)」と書かれた粉塗りの牌が下がっていた。

悟空が銀子と牌を取って城へ戻り、「三兄弟で変装して乗り込む。銀子は鍛冶師への礼金にして、王子に猪と羊を買ってもらえ」と計を立てた。「八戒は刁鑽古怪に、わしは古怪刁鑽に化ける。沙悟浄は猪羊の行商人に扮して、洞に入ったら兵器を取り返す」

悟空が定身法で固まっている本物の二匹の模様を見て八戒に変化を施し、三人は猪と羊を追いながら大路を豹頭山へ向かった。


山の凹地で青顔に赤毛の小鬼が漆塗りの請書箱を小脇に抱えて歩いてきた。「古怪刁鑽、お前たち来たか。猪と羊を買ってきたか」と問うと、悟空が「これがそうだ。この客人は売掛け銀子を取りに来た。お前はどこへ」と問い返した。「竹節山へ行って九灵元聖の老大王様を明朝の宴に招待しに行くところだ」という。

悟空が「帖(招待状)を見せてくれ」と言うと、小鬼が素直に渡した。

「明辰、肴と酒を用意して釘鈀嘉会を設け、山越えの一席に枉駕願いたい。祖翁九灵元聖老大人様へ。門下孫黄獅 頓首百拝」

九灵元聖が黄獅精の祖父だとわかった。沙悟浄が「黄獅精とは金毛獅子の精に違いない」と言い、八戒が「わしの獲物だな。"癩毛の豚は金毛獅子を追う"と昔から言う」と笑った。

虎口洞の入り口が見えてきた。大小様々な妖精たちが花の木の下で遊んでいる。八戒が猪と羊を追い込むと、妖精たちが一斉に飛びついた。

洞の王——黄獅精——が十数匹の小鬼を連れて出てきた。悟空が「猪と羊八匹に羊七腔合わせて十五匹。猪の銀が十六両、羊の銀が九両。前に二十両預かったので、五両欠けがある。この客人は銀子を取りに来た」と説明した。黄獅精が「五両取って来い」と命じた。

「客人は銀子だけでなく、宴も見てみたいと申しております」と悟空が言うと、黄獅精が「この宝は玉華州から手に入れたもの。客人が城に伝えれば王子が取り返しに来る。見せるわけにはいかぬ」と怒った。悟空がなだめて「この客人は城からは遠い商人です。腹も減っているし、食事だけご馳走して帰してくれればよい」と取り成すと、黄獅精が渋々認めた。


三人が洞の中へ入ると、二層の広間の中央の卓上に、眩しい光を放つ九齿釘鈀が供えてあった。東の山壁に金箍棒、西の山壁に降妖杖が立てかけてある。

八戒が釘鈀を見た途端、我慢できずに飛びついて卓から取り下ろし、本来の姿に戻って「かかれ」と一振りして妖精に打ちかかった。悟空と沙悟浄もそれぞれ東西の山壁に走り寄って武器を掴み、本来の姿に戻って一斉に打ちまくった。

黄獅精が慌てて奥へ退いて四明铲(しめいさん)を取り出して対峙した。「貴様ら何者だ」と叫ぶと、悟空が「東土大唐の三蔵法師の弟子だ。玉華王の三王子が俺たちを師とし、武器を手本に打造させていたところを夜盗みに来たのはお前だろう」と怒鳴りつけた。

激しい戦いが洞の内から外へ広がり、三対一でも黄獅精はなかなか屈しなかったが、日が傾くころに「鋤を見ろ」と叫んで東南へ風となって逃げ去った。

悟空が「窮寇を追うな」と八戒を止め、三人で洞の口に戻り、洞中の百余匹の虎・狼・豹・鹿・山羊の妖精を全て打ち殺した。洞の中の財物と打ち殺した獣の骸と連れてきた猪羊を全て持ち出し、沙悟浄が薪に火をつけ八戒が耳で扇ぐと洞があっという間に焼き尽くされた。


城へ戻ると老王や三蔵が暴紗亭で待ち受けていた。師弟が大量の死んだ獣と財物を持ち帰ると、三王子が礼拝した。悟空が「黄獅精は四明铲を持つ金毛獅子の精で、逃げた先は東南の竹節山——九灵元聖という祖翁の元へ向かったはずだ。招待状に書いてあった祖翁がそれだ。明日必ず復讐に来る。備えておけ」と告げた。

果たして黄獅精は竹節山九曲盤桓洞へ飛んで祖父の九灵元聖に事の経緯を話し、「祖父上、どうかお力をお貸しください。あの三人の和尚を捕らえて仇を取りたい」と訴えた。九灵元聖が「黄獅精よ、お前は手強い相手を怒らせた。あの毛顔雷公嘴の者は孫行者といって、五百年前に天宮を大乱させた者だ。しかし孫よ、わしが一緒に行ってやろう」と答えた。

九灵元圣が猱獅・雪獅・狻猊・白泽・伏狸・抟象の六つの孫を点呼して武器を取らせ、黄獅に導かれて豹頭山の界まで駆け戻ると、洞は焼け野原になっていた。

慧の神兵を失ったのは慎重さを欠いたゆえ——忽ちにして魔が起き群邪が猛威を振るう。