第七十七回 群魔、本性を欺く——ついに真如を拝す
激戦の末に八戒と沙悟浄が捕らえられ、悟空までもが大鵬に捕まって獅駝国で縛り上げられる。妖魔たちが四人を蒸し殺そうと企むが、悟空は毫毛で身代わりを作り出して脱出し、土地神に師弟の保護を託す。天宮からの援軍さえも飲み込まれ、太上老君の宝具すら通用しない絶望的な状況の中、悟空は霊山の如来を訪ね、三大王の正体が文殊の獅子、普賢の象、そして如来と縁ある大鵬金翅鵰であることを突き止める。やがて文殊と普賢が降り立ち、獣たちを連れ戻したことで、師弟はついに救い出される。
六つの体が六つの武器を持ち、半空で命がけの争いを続けた。最初はほぼ互角だったが、日が暮れてくると霧が濃くなった。八戒は大きな耳が目を覆い始めてしだいに視界が曇り、手足が鈍くなった。老魔が隙をついて刀で首元をかすらせ、八戒の衿首を咥えて城へ引きずり込んだ。
沙悟浄は八戒の危機を見て宝杖を虚しく一振りして身を翻し逃れようとしたが、第二魔(象精)が鼻を伸ばして巻き取り、城の中へ引き込んだ。
悟空は二人の弟子が捕まったのを見て、三体の妖魔と一人で渡り合ったが、一対多はやはり苦しい。棒で三体の武器を弾き返して筋斗雲で逃れようとした瞬間——第三魔(大鵬金翅鳥)が翅を一振りした。大鵬の翅は一振りで九万里、二振りで悟空の筋斗雲を追い越した。あっという間に大鵬が掌で悟空を掴んだ。大きくなれば掌が広がり、小さくなれば手を握る——変化も逃れの術も通じなかった。
師弟四人は金殿の縄で縛られた。三蔵が弟子たちに寄り添って「お前たちがいれば何とかなると思っていたのに、今日は皆がやられてしまった」と泣くと、八戒と沙悟浄も一緒に声を上げた。悟空が「師匠、兄弟たち、心配するな。あの老魔が落ち着いたら、俺たちは出発できる」と笑って言った。
老魔が「四人の坊さんを蒸して兄弟で食べ分けよう」と鉄の蒸籠を出させた。五人が水を、七人が鍋を磨き、十人が火を起こし、二十人が蒸籠を担ぎ出した。八戒が「蒸し殺されるぞ」と震えると悟空が「雛妖怪か本物妖怪か見極めてやる」と笑った。
第二魔が「八戒は蒸しにくい」と言うと八戒が喜んで「ありがたい」と言ったが、第三魔が「皮を剥いてから蒸せ」と言った。八戒が「皮を剥かなくても汁が立てば柔らかくなる」と抗議すると、老魔が「蒸しにくいのは下の段に置け」と命じた。悟空が小声で「八戒よ、蒸し物は上から火が通る。下の段は煙が上がらないから半年炊いても火が通らない。下に置かれたお前は安心だ」と教えた。
担ぎ手たちが悟空のそばに来た時、悟空は縄をするりと脱けて脳後の毛を一本抜き「変れ」と唱えて自分そっくりの偽物を残し、真身は空へ上がって見下ろした。
妖怪たちは気づかずに偽の悟空を三段目に、三蔵を最上段に乗せた。乾いた薪に炎が上がった。悟空が雲上から見ると「八戒と沙悟浄は二度の煮えに耐えられる。しかし師父は一度の煮えで終わる」と察し、すぐに土地神・城隍・五方揭諦を呼び出して「蒸籠の中に入り込んで師父と師弟を保護し、火と蒸気が当たらないようにしてくれ」と頼んだ。神々が命令を受けて入ると、蒸籠の中は薄く霞がかかったように涼しく保たれた。
悟空は援軍を求めて天宮へ飛んだ。玉帝が十万の天兵を差し向けると、老魔が大口を開けてすべて飲み込んだ。次に太上老君の金剛琢(ダイヤモンドリング)を借りて投げつけたが、これも飲み込まれた。北方の真武大帝も、玄天上帝も、何を差し向けても飲まれてしまった。
悟空は頭を抱えて霊山(霊鷲山)へ向かった。如来仏祖の前で事の経緯を話すと、如来は静かに微笑んで語った。
「悟空よ、あの獅驼岭の三頭の魔王の来歴を教えよう。第一の老魔は青毛の獅子で、文殊菩薩の座獣である。第二の老魔は黄牙の老象で、普賢菩薩の座象である。二頭とも修行が深まるほど妖気が強くなり、以前に縛を外れて逃げ出したものだ。第三の老魔——大鵬金翅鳥は、これは我と縁が深い者だ。我が生まれた時、鳳凰の中からこの鳥が陰精の気を吸って生まれた。我と一体の縁があるゆえ、我の手では滅することができない」
悟空が「では師父を救う手立ては」と問うと、如来が「文殊と普賢を呼んで座獣を連れ帰らせる。大鵬は我自身が行く」と答えた。
文殊菩薩が獅子に乗った童子を連れて獅驼岭へ降りると、青毛の獅子が法力に引かれて元の姿に戻り、文殊の足下に跪いた。普賢菩薩が白象の童子を連れて来ると、黄牙の老象も折れて伏した。
如来仏祖が南方の大鵬に向かって「汝は我と骨肉の縁がある。西方の天竺に戻って修行し、正果を成せ」と声をかけると、大鵬も翅を畳んで「わかりました」と従った。
三頭の魔が去ると小妖たちは一斉に散り散りになった。もともと狼・虎・豹・鳥・獣の類だった小妖たちは山野に返っていった。土地神や城隍が蒸籠から師弟三人を連れ出し、偽の悟空(毛の変化物)は塵に戻った。三蔵は蒸されながらも土地神の加護で無事だった。
悟空が師匠たちを連れて獅驼国の正殿に入ると、国王の玉座には妖魔の残した痕跡だけがあった。長い年月に人を食い続けた罪を犯したこの城は、今後も行く人を護るために名を改めて「僧衛城」と呼ばれるようになった。一行は関文を改印することなく先へ進んだ。
群魔は本性を迷わせたが、一体は真如に帰す——悟空は霊山に詣でて光明を開いた。