西遊記百科
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第六十回 牛魔王、戦を罷めて華筵に赴く——孫行者、二度、芭蕉扇を調す

悟空が牛魔王と激しくぶつかり合いながらも、機転を利かせて宴に潜入し、宝物を盗み出し、さらには偽装して芭蕉扇を手に入れるまでを描く。

孫悟空 猪八戒 三蔵法師 沙悟浄 牛魔王 鉄扇公主 罗刹女 芭蕉扇 玉面公主

土地が「大力王とは牛魔王のことです。積雷山摩云洞に新妻・玉面公主と住んでいます。万年狐王が死んで残した一人娘で、百万の財産を持ち牛魔王を婿に取った」と説明した。

悟空は「わかった」と言い置いて南へ筋斗雲で飛び、積雷山に着いた。松の陰から花を折って歩く美しい女性が現れた——これが玉面公主だった。悟空が「翠雲山の鉄扇公主が牛魔王を呼んでいます」と言うと、玉面公主は「あの賎女め、財産もないくせに夫を寄越せとは」と罵り始めた。悟空が口答えすると玉面公主は洞へ逃げ込んで扉を閉めた。


牛魔王が武装して出てきた。五百年ぶりに見る姿は水磨銀の鉄兜に黄金の甲、手に混鉄棍を持っていた。昔の七兄弟の義兄弟として礼を述べると、牛魔王も「悟空か」と認めたが「息子の聖嬰を奪いやがって」と怒った。

悟空が「令息は今や善財童子として菩薩のもとで長生きしています」と宥めると牛魔王はやや静まったが「それなら我が愛妾に何の礼もせずに驚かせたのは何だ」と言った。悟空が謝ると「ならば去れ」と言った。

「実は一つお願いが」と悟空が芭蕉扇の話をすると、牛魔王は「まず妻を脅し、次に愛妾を脅した上に扇を借りようとするか。三合打ち勝てば貸してやる」と混鉄棍を振るってきた。

二人は翠雲山の前で百十余合戦ったが勝負がつかない。そこへ積雷山方面から使いが来て「龍王の宴席にお越しください」と告げた。牛魔王は「猿め、急用ができた。後で戻る」と言い、鎧を脱いで黒い袍を着て辟水金睛獣に跨り西北へ飛んで行った。


悟空は「あの老牛がどこへ行くか」と清風に変化して後をつけた。乱石山碧波潭という湖に着くと牛魔王は水中に消えた。悟空は三十六斤の蟹に変化して水中へ潜ると、底に玲瓏な牌楼があり牌楼の前に辟水金睛獣が繋いであった。

中へ入ると宴が開かれており、牛魔王が龍精たちと酒を飲んでいた。蟹が場所をわきまえず大広間へ入り込むと老龍が「この野蟹め、捕らえろ」と命じた。悟空が「横行の介士、礼儀を知らず、どうかお許しを」と言うと、蟹精として謝られたのだと思って龍たちが「構わない」と放した。

外へ出ると悟空は「牛魔王が戻るのを待つより獣を奪って罗刹女を騙したほうがいい」と考えた。牛魔王の辟水金睛獣を解いて乗り、牛魔王の姿に変化して翠雲山へ向かった。

「開けろ」と叫ぶと女童が「爺爺が帰った」と報告し、罗刹女が喜んで迎え出た。「夫さま、お帰りなさい。二年も新妻のもとにいらしたのに今日は何の風の吹き回し」と言いながら手を引いて座に案内した。

悟空は「悟空が来て芭蕉扇を騙し取るかもしれない、奴が来たら知らせよ」と芝居を打った。罗刹女は「もう来ましたよ。扇で吹き飛ばしても戻ってきて、腹の中まで入られて痛くて命乞いをして偽物の扇を渡しました」と言った。

「偽物を渡したとは賢い」と悟空が言うと罗刹女は「本物は私がしっかり持っています」と笑った。宴の用意をして二人で酒を飲み始めた。

杯が数巡すると罗刹女は半分酔って体を悟空に寄せてきた。「本物の扇はどこに隠した。悟空がまた来るといけない」と悟空が聞くと、罗刹女は口の中から杏の葉ほどの小さなものを吐き出して「これが本物」と言った。

悟空が「こんなに小さくて八百里の火が消せるのか」と問うと、罗刹女は酔いに任せて「左手の親指で柄の第七の赤い糸をつまんで『嘘啊吸嘻吹呼』と唱えれば一丈二尺に伸びる。どんな火でも一扇で消える」と使い方を教えてしまった。

悟空は心にしっかり刻んで、扇を口に含んで本来の姿を現した。「罗刹女、俺が本物のご主人に見えるか?」と言い残して大股で洞を出た。罗刹女は「気が狂いそう」と床に崩れた。


山の頂上で「嘘啊吸嘻吹呼」と唱えると扇が一丈二尺に伸びた。祥光と瑞気が漂い、三十六本の赤い糸が織り成す美しい扇だった。前の偽物とは全く違う。

ただし縮める口訣を聞いていなかったので、扇は一丈二尺のまま。悟空は仕方なく肩に担いで旧路を戻った。

一方、宴を終えた牛魔王が潭を出ると辟水金睛獣がいない。「あの蟹が孫悟空だったか」と気づいた牛魔王は翠雲山へ飛んで帰ると、罗刹女が泣き崩れていた。「あの猿が金睛獣を奪い、お前に化けて、本物の扇を騙し取った」と聞いた牛魔王は歯を食いしばって「剣を持て」と命じ、二本の青鋒宝剣を手に火焰山へ向かって追いかけ始めた。