西遊記百科
🔍

第6回 観音、会に赴きて原因を問う——小聖、威を施して大聖を降す

天兵十万をも退けた孫悟空に、二郎神が挑む。神変自在の化身術を駆使した壮絶な死闘の果て、哮天犬の牙と太上老君の金剛琢がついに斉天大聖を地に伏せた。

孫悟空 二郎神 哮天犬 観音菩薩 斉天大聖

さて、天兵に四方を囲まれながらも大聖が悠然と洞窟で憩うているとき、話は南海の普陀落伽山へと移る。大慈大悲・救苦救難の観世音菩薩は、王母娘娘の招きに応じて蟠桃の大会へ赴こうと、首座の弟子・惠岸行者とともに瑤池の宝楼閣へと歩みを進めた。ところが眼前に広がったのは、荒れ果てた宴席の残骸であった。卓子は乱れ、杯は転がり、天仙たちが幾人か残ってはいるものの、席に就くわけでもなく、ただ口々に何ごとかを論じ合っている。菩薩が仙たちと挨拶を交わすと、彼らはまえに起きたことのすべてを話して聞かせた。

「盛大な宴もなく、杯も回らぬのでは致し方ない。皆さん、私について玉帝のもとへ参りましょう」

菩薩はそう言い、仙たちを連れて通明殿へと向かった。そこにはすでに四大天師と赤脚大仙らが待ち受けており、菩薩を迎えるなり、玉皇大帝が心を乱されていること、天兵を遣わして妖怪を捕らえようとしているが未だ首尾を得ていないことを告げた。

「玉帝にお目にかかりたい。取り次いでくださいませ」

天師の丘弘済がすぐさま霊霄宝殿へと入り、謁見を奏上した。折しも太上老君が上座に坐し、王母娘娘がその後方に控えていた。

菩薩は一行を率いて殿内へと進み、玉皇大帝に礼を行い、さらに老君と王母に挨拶を済ませると、それぞれ席に着いた。そうして菩薩は穏やかに問いかけた。

「蟠桃の盛会はいかがでございましたか」

玉皇大帝は憮然として答えた。

「例年は招けば皆が喜んで集い、賑やかな宴となるものを、今年はあの妖猿が暴れ回り、すっかり虚しい招待になってしもうた」

「その妖猿とは、いったいどのような出自でございますか」

「東勝神洲の傲来国、花果山の石の卵から生まれた者じゃ。誕生のときに目から金の光を放ち、それが斗府にまで達したほどであった。はじめは気にも留めなかったが、やがて精を成して龍王を降し閻魔を屈服させ、自ら死籍を抹消するに至った。龍王と閻魔王から訴えがあがったゆえ、朕は捕らえようとしたが、そのとき長庚星が申し上げた。『三界のうちで、九つの孔を持つものはすべて仙となりえます』と。

そこで朕は彼を教え育てようと天宮に召し、御馬監の弼馬温という官職に封じた。ところがあの者は官位が低いと不満を持ち、天宮に反旗を翻した。李天王と哪吒太子を遣わして降らせ、さらに詔書を下して宥め、また天宮に召して今度は斉天大聖の称号を与えた。ただし名誉の役職で、禄はない。することもなく東西に遊び回るのを見て、朕はまた何事か起こさねばよいと思い、蟠桃園の管理を任せた。

しかしあの者は法を守らず、古木に実る大きな桃をことごとく盗み食いした。宴の席では禄のない者として招待されていなかったので、赤脚大仙を謀って身代わりに仕立て、自らはその姿に化けて会場に入り込み、仙の餚も仙酒もすべて盗み食いした。さらに老君の仙丹まで盗み、御酒も数多持ち去り、花果山の猿たちと宴を開いた。

朕はこのことで心を悩ませ、十万の天兵を差し向け、天羅地網を張って捕縛させようとしたが、一日経っても知らせが届かず、勝敗がいかになっているのか分からぬ」

菩薩は話を聞き終えると、すぐさま惠岸行者に命じた。

「急いで天宮を下り、花果山へ行って軍の様子を探ってきなさい。もし戦いが続いているようなら加勢して功を立て、必ず確かな報告を持って戻るように」

惠岸行者は衣を整え、鉄の棍棒を手に取ると、雲に乗って宮殿を発ち、一直線に山へと向かった。山の前に着いてみると、天羅地網は幾重にも張り巡らされ、各陣営の兵士たちが巡回の声を上げながら、山を水一滴も漏れぬほどに包囲していた。惠岸は立ち止まって呼びかけた。

「陣門を守る天丁に申し上げる。私は李天王の次男・木吒、南海の観音菩薩の首座弟子・惠岸である。軍の様子を探りに参った」

陣内の五岳の神兵がその言葉を中軍の天幕へと伝えると、李天王は令旗を下して天羅地網の一角を開けさせ、惠岸を迎え入れた。

ちょうど東の空が白み始める頃合いで、惠岸は旗の先導に従って陣中に入り、四大天王と李天王に礼をした。礼が終わると、李天王が問いかけた。

「木吒よ、どこから来たのじゃ」

「拙僧は菩薩とともに蟠桃会に赴きましたが、菩薩が宴の荒れ果てた様子をご覧になり、衆仙と拙僧を連れて玉帝に謁見されました。玉帝が、父王らが妖猿を捕らえに下界へ赴いたが一日経っても知らせが届かないと申されたので、菩薩が拙僧をここへ偵察に遣わしたのでございます」

李天王は眉を曇らせて答えた。

「昨日ここに陣を張り、九曜星に挑戦させたが、あの者の神通は凄まじく、九曜星たちは皆敗れ退いた。その後、我々が自ら軍を率いて対峙したが、あの者も陣を敷いて立ち向かってきた。十万の天兵で夜まで入り乱れて戦ったが、あの者が分身の術を使って我々を退けた。兵を引いて点呼してみると、捕らえられたのは狼や虎や豹の類ばかりで、妖猿は一匹も捕まっておらぬ。今日はまだ戦いが始まっていない」

話が終わらぬうちに、辕門の外から報告が飛び込んできた。

「大聖が猿の精鋭を率いて、外で戦いを挑んでおります」

四大天王と李天王、太子が出陣の相談をしていると、木吒が申し出た。

「父上、拙僧は菩薩に命じられて状況を探りに来ましたが、戦いがあれば加勢するようにとのお言葉もいただいております。この機会に、あの大聖とやらがどれほどのものか見てみとうございます」

天王は心配そうに言った。

「木吒よ、菩薩のもとで修行したこれまでの間に、多少の神通は身についておろう。よくよく気をつけよ」

木吒は両手で鉄棍を振りかぶり、錦の衣を引き締めると、辕門から躍り出て高らかに叫んだ。

「斉天大聖はいずこにおるか」

大聖は如意棒を手にして応じた。

「老孫がそれじゃ。何者が問うのか」

「我は李天王の次男・木吒、南海の観音菩薩の宝座の前で護法の弟子となっている者、法名を惠岸という」

「南海で修行せず、何しにここへ参った」

「師匠の命で偵察に来たが、おぬしのかくも傍若無人な振る舞いを見て、捕らえてやろうと思い立ったのよ」

「そのような大言、聞き捨てにはできぬ。逃げずに老孫のこの一棒を受けてみよ」

木吒は少しも怖じることなく、鉄棒を手に立ち向かった。二人は山の中腹に立ち、辕門の外にて、かくも激しく打ち合った。

棍は棍と交わるも、その鉄は異なり、 兵と兵が激突すれど、人は同じからず。 一方は太乙の散仙、大聖と呼ばれる者、 一方は観音の弟子、正道の龍の子。 浑鉄の棍は千の鎚に鍛えられ、 六丁六甲の神功を込めて振られる。 如意棒は天河の底より取り出され、 鎮海の神珍、その法力は広大無辺。 二人が相まみえて真の好敵手となり、 往来する手捌き、まこと窮まりなし。 陰手の棍は万変して凶なること極まり、 腰を絡める索は風よりも迅く、 挟撃の棒は一瞬も外さず、 左に遮り右に防ぎ、容赦するいとまなし。 かの陣の旌旗は煌めき翻り、 こちらの陣の皮鼓は轟々と鳴り響く。 万の天将が円を描いて取り巻き、 一洞の妖猿が簇なって集う。 怪しき霧と愁いの雲は地府まで漂い、 狼煙と殺気は天宮をも射る。 昨日の乱戦もまだ凄まじかったが、 今日の死闘はそれにも増して荒れ狂う。 猿王の真の本領、賛えるに値す、 木吒また敗れて命からがら逃げ去った。

大聖と惠岸は五、六十合も打ち合い、惠岸はとうとう腕が痺れ、もはや戦い続けることができなくなった。一つ見せかけの一撃を放ち、敗走した。大聖も猿の軍勢を引き上げ、洞窟の前に陣を構えた。一方、天王の陣営では、大小の天兵が太子を出迎え、道を開けて辕門の中へ通した。木吒は四天王、李天王、哪吒の前に立つと、まだ息を切らしながら言った。

「大変な者でございます、まことに!神通は広大で、拙僧では太刀打ちできず、またも敗れて戻ってきました」

李天王は愕然とし、すぐに救援を求める上表文を認め、大力鬼王と木吒太子を天宮へ送り届けることにした。

二人はただちに天羅地網を抜け出し、瑞雲祥気を起こして天へ昇った。間もなく通明殿の前へ到着し、四大天師に引き合わされて霊霄宝殿へと進み、表章を奏上した。惠岸はまた菩薩に礼を行った。

「様子はどうでしたか」と菩薩は問うた。

「命を受けて花果山に参り、天羅地網の門を開けてもらい父上にお目にかかり、師匠のご命令の旨を伝えました。父上によれば、昨日あの猿王と戦ったが捕まえられたのは虎・豹・獅子・象の類ばかりで、猿の精は一匹も捕まっていないとのことでした。ちょうど話の途中にまた戦いを挑まれましたので、拙僧が鉄棍を持って五、六十合戦いましたが勝てず、敗走して陣営へ戻りました。父上がそれゆえ大力鬼王と拙僧を上界へ助勢を求めに遣わしたのでございます」

菩薩は頭を垂れてしばし思案した。

さて、玉皇大帝が表章を開いてみると、助勢を求める言葉が綴られていた。玉帝はにこやかに言った。

「この猿めが、どれほどの腕前があるというのか。十万の天兵を敵に回せるとは。李天王がまた助けを求めてきたが、いったいどの道の神兵を遣わすべきか」

言い終わらぬうちに、観音菩薩が合掌して申し上げた。

「陛下、どうぞご安心ください。貧僧に一柱の神のことが思い当たります。あの猿を捕らえることができましょう」

「それはどなたですか」

「陛下のご甥君、顕聖二郎真君でございます。今は灌州の灌江口においでになり、下界からの香火を受けておられます。かつて六怪を誅伐なされた御方で、梅山の兄弟と帳前千二百の草頭神を率いて、その神通は誠に広大でございます。ただあの御方は、召し上げられても赴かれるがご自身の判断で動かれる御方ゆえ、陛下が調兵の詔を降してお力を借りれば、きっと捕らえることができましょう」

玉皇大帝はその言葉を聞くと、ただちに調兵の詔を認め、大力鬼王に持たせて灌江口へと遣わした。

鬼王は詔を受け取ると、すぐに雲を起こして灌江口へ飛んだ。半時とかからず二郎神の廟へと至れば、門番の鬼判官がすぐに内へ伝えた。

「外に天の使者がおられ、詔を奉じてお越しになりました」

二郎神はすぐに兄弟たちとともに門を出て詔を迎え、香を焚いてその内容を読んだ。詔にはこうあった。

花果山の妖猿・斉天大聖が乱を起こした。宮中にて桃を盗み、酒を盗み、丹を盗み、蟠桃の大会を乱した。十万の天兵と十八架の天羅地網を差し向けて山を包囲し制圧しようとしたが、いまだ勝利を得ていない。今特に甥君を兄弟ともども花果山へ派遣し、妖猿を討ち滅ぼすのを助けてもらいたい。成功の暁には、高い位と手厚い恩賞を与える。

二郎神は大いに喜んだ。

「天の使者よ、お帰りください。すぐに刀を抜いてお助けしましょう」

鬼王が帰って奏上したことは省く。

二郎神はすぐさま梅山の六人の兄弟——康・張・姚・李の四太尉と、郭申・直健の二将軍——を呼び集め、殿の前でこう告げた。

「今しがた玉帝の命で我々は花果山へ赴いて妖猿を降すよう調兵された。共に行こう」

兄弟たちは皆、喜んでこれに応じた。すぐに配下の神兵を点呼し、鷹を駆け犬を引き、弩を張り弓を構え、猛烈な風に乗って、瞬く間に東洋大海を越えて花果山へと至った。

天羅地網が幾重にも張られて前へ進めないのを見て、二郎神は叫んだ。

「天羅地網を守る神将たちよ、聞け。我は二郎顕聖真君、玉帝の命で妖猿を捕らえに来た者。急ぎ営門を開けよ」

一斉に、各層の神将たちが次々と内へ伝え、四大天王と李天王が皆、辕門を出て二郎神を出迎えた。挨拶を交わした後、天王らは勝敗の経緯をすべて話した。二郎神は笑いながら言った。

「小聖がここへ来た以上、あの者と化身術で勝負するほかはありません。皆さんは天羅地網の上を開けておき、四方だけをしっかり囲んでください。私が賭け勝負をして参ります。

もし私があの者に負けても、皆さんの助けは要りません、兄弟たちが支えてくれます。もし勝ったとしても、縛るには及びません、兄弟たちが手を下します。ただ、托塔天王には照妖鏡を持って空中に立っていてほしい。もし万が一あの者が敗走して他の場所へ逃げた時、鏡で照らして見失わないように」

天王らは四方に位置を定め、天兵たちはそれぞれの陣に並んだ。

二郎神は四太尉と二将軍を連れ、合わせて七人の兄弟で陣営を出て挑戦状を突きつけた。そして配下に陣を固く守り、鷹と犬を手元に置くよう命じた。草頭神たちは命を受けた。

二郎神は水簾洞の外へ出ると、猿たちが整然と並んで蟠龍の陣を敷いているのを目にした。中軍には一本の旗が立てられ、「斉天大聖」の四文字が記されていた。

「この猿め、どうして斉天などという高職を名乗ることができようか」

梅山の六弟子の一人が言った。

「嘆いていても始まらぬ、さっさと戦いを挑もう」

陣の入口の小猿が二郎神を見るや、すぐに内へ走り込んで報告した。猿王はただちに如意金箍棒を抜き、黄金の鎧を整え、歩雲の履を履き、紫金の冠をひと押しすると、陣営の外へ躍り出て目を見開いた。その真君の容貌は、誠に清く秀でていた。

清俊なる顔立ちに、堂々たる威容、 両耳は肩まで垂れ、眼には光が宿る。 頭には三山の飛鳳帽をいただき、 身には淡い鵝黄色の一領を纏う。 金糸の靴は盤龍の靴下を覆い、 玉の帯は団花を散らした八宝の装い。 腰には新月型の弾弓を挟み、 手には三尖両刃の槍を執る。 斧もて桃山を割りて母を救い、 弾丸もて棕羅の双鳳凰を打ち落とし、 力もて八怪を誅してその名は遠く轟き、 義もて梅山の七聖と兄弟の誓いを結んだ。 心高くして天家の縁戚と認めず、 性骨あって灌江に帰り神と祀られる。 赤城にて昭惠の英灵の聖として崇められ、 その変化は無辺、二郎の号もて呼ばれる。

大聖はその姿を見て、にやりと笑いながら如意金箍棒を振り上げ、高らかに叫んだ。

「どこの小将が、こうも大胆に挑戦状を持ってきたのじゃ」

真君は一喝した。

「この猿め、目はあっても見えぬのか、この私が分からぬとは。我は玉帝の甥、勅封・昭惠霊顕王・二郎これなり。天の命を受け、天宮に叛いた弼馬温の猢狲を捕らえに来た。己の命も分からぬのか」

大聖は言った。

「そういえば昔、玉帝の妹君が人間界に下られて楊君と結ばれ、斧で桃山を割ったという男子がいたな、おぬしか? 骂ろうとも思うが、特に怨みはない。棒でぶん殴ってやろうとも思うが、おぬしの命が惜しい。おぬしのような若輩者よ、さっさと引き返して四大天王でも出してきなさい」

真君はその言葉を聞いて心中に大いに怒り、叫んだ。

「この猿め! 無礼なことを言うな、我の一刃を受けよ!」

大聖は身を翻して躱し、素早く如意金箍棒を手に応戦した。二人の間で、かくも壮絶な戦いが繰り広げられた。

昭惠の二郎神と、斉天の孫大聖。 こちらは心高くして美猴王を見下し、 彼方は面構えもって真の棟梁を圧する。 二人が初めて相まみえ、互いに賭けに出る。 元よりその深浅を知らなかったが、 今日こそ軽重をようやく知ることになった。 鉄棒は飛龍の如く天を翔り、 神の刃は鳳凰の如くして舞い踊る。 左に防ぎ右に攻め、前で迎えて後ろで映じ、 この陣には梅山の六弟が威を添え、 彼の陣には四匹の馬・流の将が軍令を伝える。 旗を振り鼓を叩いてそれぞれ気持ちを一つにし、 鬨の声と鑼の音がともに戦いを盛り上げる。 両者の鋼刀はわずかな隙を見て機を計り、 一来一往に糸の目ひとつも入らぬ。 如意金箍棒は海の底よりの宝、 変化自在に飛びかかって勝ちを取りに行く。 もし身が遅ければ命は尽きるほかなく、 少しでも差を生じれば蹉跎となろう。

二郎神と大聖は三百余合打ち合い、勝敗は決しなかった。ここで真君は神威を奮い起こし、身を揺すって変身した——体は万丈の高さとなり、両手に三尖両刃の神刀を掲げた姿は、まるで華山の峰そのもの。青黒い顔に牙を剥き、真っ赤な髪を逆立て、恐ろしい形相で大聖の頭上から斬り下ろした。大聖もまた神通を発動させ、二郎神と同じほどの体躯に変じ、如意金箍棒を振るう姿は昆侖山頂の天を支える柱の如く、二郎神に真っ向から対峙した。

この光景に、馬・流両元帥は戦慄いて旌旗すら振れず、崩・芭の二将は気が萎えて刀剣も使えなくなった。一方、陣中では康・張・姚・李・郭申・直健が号令を発し、草頭神たちを放って水簾洞の外へ向け、鷹と犬を解き放ち、弩と弓を一斉に放って押し寄せた。哀れにも、妖猿の四人の健将は蹴散らされ、霊怪二、三千は捕縛された。

猿たちは戈や甲冑を投げ捨て、剣や槍を放り出して逃げ惑い、山へ駆け上る者、洞窟へ飛び込む者、まるで夜のとばりに眠る鳥を驚かしたかのように、満天に散らばる星のごとく四散した。兄弟たちの大勝利はここには語るまい。

さて、二郎神と大聖が法天象地の巨大な姿で激しく戦っていると、大聖はふと自陣の猿たちが四散しているのを目にした。心が乱れて法象を収め、棒を引いて踵を返した。真君が敗走するのを見て大股で追いかけながら叫んだ。

「どこへ逃げる!早々に降参せよ、命だけは助けてやろう」

大聖は戦う気もなく、ただ逃げるのみ。洞口に近づいたところで、ちょうど康・張・姚・李の四太尉、郭申・直健の二将軍が軍勢を率いて行く手を遮り、叫んだ。

「猿め、どこへ行くつもりだ!」

大聖は狼狽して、如意金箍棒を縫い針ほどの大きさに縮め、耳の中に隠した。そして身を揺すって変身し、一羽の雀となって木の梢に止まった。六人の兄弟は慌てふためき、前後を探しても姿が見えず、口々に叫んだ。

「猿の精が逃げた!猿の精が逃げたぞ!」

騒いでいるところへ真君が到着して問うた。

「兄弟たち、追い掛けてどこへ消えたのか」

神将たちが答えた。

「今ここで囲んでいたのに、消えてしまいました」

二郎神は鳳の目を大きく見開いて見渡すと、大聖が雀に変じて梢に止まっているのを見つけた。すぐに法象を収め、神刀を捨て、弾弓を外すと、身を揺すって一羽の鷂鷹に変じ、翅を広げて飛び込んで行った。大聖はそれを見るや素早く翼を羽ばたかせて飛び立ち、大きな鵜に変じて天高く舞い上がった。二郎神はすぐさま羽を振るわせて変身し、大きな海鶴と化して雲を突き抜けて追いかけ、嘴で啄もうとした。

大聖は身を沈めて渓谷へ飛び込み、魚に変じて水中へと潜り込んだ。二郎神が渓谷の縁まで追いかけてきたが姿が見えない。内心思った。

「この猢狲はきっと水の中へ入って、魚か蝦の類に変じたに違いない。では私も変身して捕まえよう」

果たして変身すると鵝鴨——魚鷹のような鳥——となり、下流の水面を漂いながら待ち構えた。大聖は魚に変じて流れに乗って泳いでいたが、ふと一羽の鳥を見かけた。青鷂のようだが羽の色が青くない。鷺鷥のようだが頭上に羽飾りがない。老鸛のようだが脚が赤くない。

「これはきっと二郎神が変じて私を待ち構えているに違いない」

急いで向きを変え、躍り上がって逃げようとした。二郎神はこれを見て叫んだ。

「躍り上がった魚め。鯉のようだが尾が赤くない。鱸のようだが花の鱗が見えない。鱧のようだが頭上に星がない。鯖のようだが鰓に針がない。私を見てすぐに向きを変えたとは——これはあの猿に違いない」

追いかけて嘴でぱっと突いた。

大聖は水中から躍り出ると、一変して水蛇となり、岸に寄って草むらへと潜り込んだ。二郎神は嘴で突こうとして外したが、水しぶきの中から蛇が這い出るのを見て大聖だと見抜いた。急いで向きを変え、今度は朱色の頭を持つ灰色の鶴に変じ、長い嘴を鋭い鉄の挟みのようにして水蛇を食らおうと飛びかかった。

水蛇はひと跳びして、また花鸨という鳥に変じ、木訥な様子でたで草の中州に佇んだ。二郎神はこの変身があまりにも賤しいのを見て(花鸨というのは鳥の中でも最も賤しく品のない鳥で、鸞や鳳凰や鷹や烏など何とでも交わる)、近づこうとしなかった。本来の姿に戻り、歩み寄ると弾弓を取り出して一杯に引き絞り、弾丸を放った。大聖はよろめいてひっくり返った。

大聖はその機に乗じ、山の崖を転がり落ちると、伏せながらまた変身した。今度は土地廟に変じたのである。大きく口を開けた姿は廟の門の如く、歯は門扉に、舌は菩薩の像に、目は窓格子になった。ただし尻尾だけはどうにも処置できず、後ろにそのまま立てて旗竿に変じた。

真君が崖下まで追ってきてみると、打ち倒したはずの花鸨の姿はなく、代わりに小さな廟が一つある。鳳の目を開いてよくよく見ると、後ろに旗竿が立っているのが見えた。真君は思わず笑った。

「この猢狲め、また私を騙そうとしているな。廟はよく見たことがあるが、後ろに旗竿が立っているのは今まで見たことがない。どう考えてもこの畜生が悪戯をしているのだ。もし私が中へ入ったりすれば一口に嚙まれてしまう。そんなことはしない。拳で窓格子を突き、蹴りで門扉を砕いてやろう」

大聖はこれを聞いて内心ぞっとした。

「こいつは容赦がない!門扉は私の歯、窓格子は私の目、歯を打たれ目を突かれてはたまらない」

ぱっと虎のように跳び上がり、また空中に飛び出して姿を消した。

真君は前後左右に追い回したが、やがて四太尉と二将軍が一斉に駆け寄り、言った。

「兄上、大聖を捕らえましたか」

真君は苦笑した。

「あの猿め、さっきは廟に変じて私を騙そうとした。窓格子を突き蹴りで門扉を砕こうとした瞬間、ぴょんと跳んで消えてしまった。まったく不思議じゃ」

皆は目を丸くして四方を見渡したが、どこにも影もない。

「兄弟たち、ここで見張りをしていてくれ。私が上へ行って探してくる」

真君はすぐに体を起こして雲に乗り、空へと上がった。見上げると、李天王が照妖鏡を高く掲げ、哪吒とともに雲の端に立っている。真君が声をかけた。

「天王、猿王をご覧になりましたか」

「上には来ておらぬ。ここでこちらが照らしておる」

真君はここで化身術の賭け勝負、神通の披露、群れの猿を捕らえたことの一部始終を語り、こう締めくくった。

「あの者が廟に変じて、ちょうど打ち砕こうとしたところで逃げられました」

李天王はその言葉を聞くと、照妖鏡で四方を照らし、わっはっはと笑い声を上げた。

「真君、急いで行け、急いで!あの猿は隠身の術を使って包囲を抜け出し、おぬしの灌江口の方へ向かったぞ」

二郎神はそれを聞くや神刀を引っつかみ、灌江口へと追いかけた。

さて、大聖はすでに灌江口に着いており、身を揺すって二郎神の姿に変じると、雲を降りて廟の中へ入った。鬼判官たちは見分けがつかず、一人残らず頭を地に擦り付けて迎えた。大聖は中央に座り、香火の帳面を点検した。李虎が願ほどきとして供えた三牲、張龍が福を請い願った物、趙甲が子を授かるよう書いた祈願文、銭丙が病の快癒を祈る願書などが目に入った。

ちょうど見ているところへ、誰かが報告に来た。

「また別の御前様がおいでになりました」

鬼判官たちが急いで見に行くと、皆が肝を潰した。本物の真君が到着したのである。真君は言った。

「斉天大聖とかいう者が、今ここへ来はしなかったか」

鬼判官たちが答えた。

「大聖様などはお見えになりません。ただ御前様お一人が中で帳面をご覧になっておりますが」

真君が門を押し開けて踏み込むと、大聖はその姿を見て本来の相貌を現して言った。

「若様、騒がずとも。この廟はもう孫のものになりましたぞ」

真君は即座に三尖両刃の神刀を振り上げ、顔めがけて斬りかかった。大聖は体の動きで刃を躱し、縫い針を取り出してひと振りすれば、たちまち腕の太さほどになり、追いかかって正面から打ちかかった。

二人は喚き合い騒ぎ合いながら廟の外へ打って出ると、霧と雲の中を戦いながら移動し、また花果山へと戦い戻った。四大天王らはにわかに警戒を厳重にした。康・張の太尉らが二郎神を迎え、力を合わせてあの美猴王を囲んだことは言うまでもない。

さて、大力鬼王は二郎神と六人の兄弟を調兵して妖魔の捕縛へと向かわせた後、天宮へ戻って奏上した。玉皇大帝は観音菩薩、王母、衆仙たちとともに霊霄殿で話し合っていた。

「二郎神がすでに出向いたが、一日経っても報告がない」

観音菩薩が合掌して申し上げた。

「貧僧、陛下に道祖とともに南天門の外へ出ていただき、直に様子をご覧になることをお願い申し上げます」

「おっしゃる通りじゃ」

玉皇大帝はすぐに輿を仕立て、道祖・観音・王母・衆仙を連れて南天門へと向かった。天丁と力士がすぐに出迎え、門を開けて遠くを見やった。見れば、天兵たちが羅網を張って四面を囲み、李天王と哪吒が照妖鏡を掲げて空中に立ち、そして真君が大聖を中央に囲んで幾重にも取り巻き、入れ替わり立ち替わって死闘を繰り広げている。

菩薩は口を開いて老君に言った。

「貧僧が推薦した二郎神、いかがでしょうか。果たして神通があり、もうあの大聖を囲んでおります。ただ、まだ捕らえてはおりません。私が今から加勢してやれば、きっと捕まえることができます」

老君が尋ねた。

「菩薩はどのような兵器を使われますか、どうやって助けるのですか」

「あの浄瓶の柳の枝を投げ下ろして猿の頭を打ちます。殺せなくとも、ひと転びさせれば二郎の小聖が捕まえやすくなりましょう」

老君は言った。

「あなたの瓶は磁器でできております。うまく頭に当たればよいが、もし外れて鉄の棒に当たれば砕けてしまいます。お手を出されるな、私が加勢いたしましょう」

「どんな兵器をお持ちですか」

「ある、ある」

老君は袖を捲り上げ、左腕から輪のようなものを外した。

「この兵器は坤钢を練って作ったもの、私が還丹を点じて身に霊気を養わせ、変化自在、水にも火にも侵されず、あらゆる物を套することができる。名を金剛琢とも、金剛套とも申す。かつて函谷関を越えて胡を化して仏にした際、大いに助けてもらったものじゃ。常に護身に最もふさわしい。これを下へ投げつけてやろう」

言い終わると、天門から下へ向けて投げた。滴流流と音を立てながら花果山の陣中へまっすぐに落ち、まさに猿王の頭の上にぴたりと当たった。猿王は七聖との苦しい戦いに集中していて、天上からこの兵器が落ちてくるとはまるで気づいておらず、頭頂を打たれて足元がぐらつき、よろめいて倒れた。立ち上がろうとしたところへ、二郎神の細犬——哮天犬——が追いつき、ふくらはぎに飛びついて一口噛み、またも転倒した。

大聖はその場に倒れ伏しながら、罵った。

「この亡者め!家の主人の邪魔をせずに、老孫に噛みつきおって!」

急いで起き上がろうとしたが立てない。七聖が一斉に押しかさなり取り押さえ、縄で縛り上げ、勾刀を琵琶骨に貫いた。もはやいかなる変化も不可能となった。

老君は金剛琢を回収し、玉皇大帝に観音・王母・衆仙を連れて霊霄殿へ戻るよう請うた。下では四大天王と李天王ら諸神が皆、兵を引き上げて陣営を畳み、小聖に近づいて祝いの言葉を述べた。

「これはすべて小聖のご功績です」

二郎神は首を振った。

「これは天尊の大いなるご加護と、衆神の威権によるものです。私に何の功がありましょう」

康・張・姚・李が言った。

「兄上、あれこれ言っている場合ではない。この者を押して上界へ行き、玉帝にお目通りして裁きを仰ごう」

真君は言った。

「弟たちよ、おぬしらはまだ天の籍簿に名が入っておらぬゆえ、玉帝に直接お目にかかることはできぬ。天甲の神兵に護送を任せ、私が天王らとともに上界へ戻って報告しよう。おぬしらは軍勢を率いてここで山を隅々まで捜索し、終わったら灌口へ戻れ。私が恩賞をいただき、功績を確認したら帰ってきて一緒に祝おう」

四太尉と二将軍は快く承諾した。真君と衆神はただちに雲に乗り、凱歌を歌いながら意気揚々と天へと向かった。

ほどなく通明殿の外に到着した。天師が奏上した。

「四大天王らが妖猿・斉天大聖を捕らえ、ここに参っております、ご裁断をお待ちしております」

玉皇大帝は詔を伝えた。ただちに大力鬼王と天丁らに護送させ、斬妖台へ連行して、この者の体を細かく刻み砕くよう命じた。

ああ、誠にこの通り——欺き騙いたことが今、刑と苦しみをもたらし、英雄の気概も今この時に尽きようとしている。

はたして猿王の命やいかに、その答えは次の回へと持ち越される。