西遊記百科
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第五十九回 唐三蔵、火焔山に阻まる——孫行者、芭蕉扇を求めて

火焔山の猛火に道を阻まれた一行は、鉄扇公主が持つ芭蕉扇で火を消そうとするが、悟空は拒絶され、さらには偽物の扇によって事態を悪化させてしまう。

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師弟四人は西へ進むうちに炎熱が身に迫ってくるのを感じた。三蔵が「今は秋のはずなのになぜこれほど暑いのか」と問うと、八戒が「西梁国のさらに先に日没の国があり……」と説明し始めたが悟空が笑って「そこは遥か先だ、違う理由がある」と制した。

路傍に赤い瓦・赤い煉瓦・赤い門扉の庄院があった。老人が出てきたので悟空が事情を聞くと「ここは火焰山といいます。春も秋もなく四季すべて暑い。西へ続く道の六十里先に八百里の炎があって、銅の頭・鉄の身でも化けてしまう」と言った。三蔵は顔色を失った。

門の外で若者が赤い車を押して「糕(もち菓子)はいかが」と売っていた。悟空が銅銭で一つ買うと、手に持った途端に熱くて左右へ移し替えた。「君の糕の粉はどこから来る」と聞くと、若者は「鉄扇仙の芭蕉扇を借りれば扇一本で火を消し、風を起こし、雨を降らせてくれる。それでやっと田畑を耕せる」と言った。

悟空は三蔵のもとへ戻って「師匠、鉄扇仙を探してきます」と告げた。老人によれば「西南の翠雲山、芭蕉洞に住んでいる。往復一ヶ月、千四五百里」とのことだったが、悟空はひとっ飛びで翠雲山へ着いた。


山中の樵師に「芭蕉洞はどこか」と聞くと「芭蕉洞はある。鉄扇仙はいないが、鉄扇公主——罗刹女という。大力牛魔王の妻だ」と教えられた。

悟空は「また因縁の相手か」と思ったが覚悟を決めて洞門へ行き「お嫂さん、東土の取経僧が火焰山を渡るために芭蕉扇を借りに来ました」と声をかけた。

女童が奥へ告げると、罗刹女は「孫悟空」の名を聞いた途端、顔を赤くして二口の青鋒宝剣を持って飛び出してきた。「貴様が我が子を菩薩に渡したな。来い、首を差し出せ」と怒鳴った。

悟空は「お嫂さん、令息は今や善財童子として極楽に長生きしています。礼を言うべきところを怒るとは」と宥めたが、罗刹は「しゃらくさい、剣を受けろ」と十数度斬りかかった。悟空は全く動じなかった。罗刹が退こうとすると悟空が「ならば棒を受けろ」と棒を出した。

二人は翠雲山の前で激しく戦ったが、罗刹は夕暮れ近くになって本物の芭蕉扇を一振りした。悟空はふわふわと宙に浮いて止まれず、一晩流されて小須弥山に落ちた。


小須弥山に着くと霊吉菩薩の禅院があった。前の黄風怪の難の際にお世話になった菩薩だ。事情を話すと菩薩が「あの扇で人を吹き飛ばせば八万四千里行かないと止まらない。大聖は留雲の能があったからこの山で止まった。私は如来から定風丹を預かっている。これを使えばどれだけ扇っても動かない」と言い、錦の袋から丸薬を取り出して悟空の衣の衿に縫い込んだ。

悟空は感謝して翠雲山へ戻り、再び洞門を叩いて「借りに来た」と叫んだ。罗刹女は「あれだけ吹き飛ばしたのにもう戻ってきた」と驚きながらも宝剣を持って出てきた。戦って五七合、罗刹が扇を一振りすると悟空はびくともしない。二度三度扇っても動かない。罗刹女は洞に引き込んで門を閉じた。

悟空は定風丹を口に含んで蟭蟟虫に変化し、門の隙間から中へ入った。罗刹女が「渇いた、茶を」と言うと女童が茶を注いだ。悟空は茶の泡の下へ飛び込んで罗刹女が茶を飲むのと一緒に体内へ入り込んだ。

「お嫂さん、芭蕉扇を貸してください」と腹の中から叫ぶと罗刹女は驚いて「どこで叫んでいる」と女童に聞いた。「お体の中で叫んでいます」と言われて罗刹女は大慌てした。

悟空が足で蹴ると腹に激痛が走り、頭で突き上げると心臓が痛んで「孫叔父よ、命だけは助けて」と泣き崩れた。悟空が「牛大哥の情により命は助ける。扇を出せ」と言うと、女童に扇を持ってこさせた。

悟空は蟭蟟虫のまま喉まで上がって扇を確認し、本来の姿に戻って口から飛び出した。「嫂嫂、借りました、ありがとう」と言い残して洞を出た。


火焰山まで戻って扇で一振りすると——火が高く舞い上がった。二振りするとさらに激しくなった。三振りすると炎が千丈の高さに上がって悟空の尻の毛まで焦げた。急いで師弟のもとへ逃げ帰って「偽物だ、騙された」と言った。三蔵は涙をこぼした。

日暮れ近く、路傍から火焰山の土地が現れて一行に斎飯を捧げた。「芭蕉扇が必要ならば、大力王・牛魔王を訪ねなければなりません」と言い、「積雷山摩云洞に新しい妻・玉面公主を迎えて住んでいます。此から三千里の南にあります」と教えた。

真の扇を得るには、牛魔王を探すしかない。