西遊記百科
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第五十四回 法性は西へ至り女国に逢う——心猿は計を定めて煙花を脱す

西梁女国に辿り着いた三蔵法師が女王から求婚されるが、悟空の機転で脱出を試みるものの、不意に現れた女妖にさらわれる。

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師弟が村を出て三四十里ほど進むと、前方に城壁が現れた。通りは賑わっているが、老いも若きも、農夫も商人も、すべて女性だった。師弟の一行を見た女たちが「人種が来た、人種が来た」と声を上げて道を塞いだ。

三蔵が馬を止めると八戒が「俺は売り物の猪だ」と叫んだ。悟空が「この牙をむいた顔を見せてやれ」と言うと、八戒は扇のような耳を立てて大きな嘴を突き出して「フー」と叫んだ。女たちはわっと退いて道が開いた。

市街に入ると店先も茶館も酒場も、旗を掲げた楼台も、すべてきれいに整っていた。しばらく進むと女の官人が街路に立って「遠来の使者は勝手に城門へ入ってはなりません。迎陽駅に投宿して名簿に名を記し、奏上のうえ通行を許可します」と言った。

三蔵が駅に入ると女の駅丞が茶を持って来て応対した。悟空が来歴を話し通関文牒を提示すると、駅丞は控えを取って「女王に奏上してまいります」とすぐに城内へ向かった。


女王は報告を受けると満面の笑みを浮かべた。「昨夜、金の屏風に彩が映え、玉の鏡が光り輝く夢を見た。これが今日の吉兆だ」と言い、臣下に向かって「唐の御弟を夫として迎え、私が后となって子孫を残す。これこそ夢の意味だ」と宣言した。

太師が媒人として駅へ赴いた。「我が王は唐御弟を夫に迎えたいとのご意思です。一国の富をもって招聘いたします」と申し出ると、三蔵は低頭して無言だった。

八戒が口を挟んで「太師よ、師匠は出家者ゆえ国の富も美女も要りません。関文を早く換えてわれらを先へ行かせてください。代わりにわしが婿に」と言った。太師は胆を縮めて答えなかった。

悟空が「師匠、よい縁談ではありませんか。先を急ぐより、ここで富貴を受け取っては」と言うと、三蔵が「勝手なことを言うな。誰が西天へ取経に行くのか」と叱った。

師弟が離れると悟空はこっそり三蔵に告げた。「師匠、これは仮婚脱網の計です。断れば関文を換えてもらえない。最悪の場合、女国中の人を傷つけることになる。師匠は長年慈悲を大切にされてきた。仮に婚礼を受け入れる振りをして関文に印を押してもらい、見送りで城外に出たところで脱出すれば誰も傷つかない。老孫が定身法を唱えれば皆が動けなくなる。一昼夜逃げ続ければ術を解いても追いつけない」と計を打ち明けた。

三蔵が「夫婦の礼を強いられたら元陽が損なわれる」と懸念すると、悟空は「あくまで振りだけです。印が取れれば宴の席で送り出しを頼んで城外へ誘い出します。そこから馬に跨れば終わりです」と説明した。三蔵は「深い知恵だ」と感謝してうなずいた。


太師と駅丞が「御弟は承諾されました」と報告すると、女王は喜んで大駕を整えて城外へ出迎えに向かった。

六頭の龍が彩を吹き、双鳳が祥を生む鳳輦が進み出た。金魚の飾りに玉佩の女官たちが列を作り、笙歌の音色が街路に響いた。

女王が輦から降りると、太師が「あちらの衫を着た方が唐御弟です」と指した。女王はよく見ると、三蔵の風貌が端正で気品があった。

歯は銀を積むように白く、唇は朱のように赤い。 頂が平らで額が広く、目は秀でて眉は清らかだ。

女王は心が揺れて「唐御弟、さあ鳳鸾に乗っておいでなさい」と艶やかな声で呼んだ。三蔵は耳が赤くなり、うつむいたまま動けなかった。悟空が「師匠、師母様と早くお乗りになって。早く関文を換えてもらいましょう」と囁くと、三蔵は涙を拭い、心の内に取経の念を堅く保ちながら女王と並んで鳳輦に乗った。

女王は喜び、三蔵は憂い——同じ輦に乗りながら、二人の心はまるで違う方角を向いていた。


宴は東の閣に設けられ、素食と荤食の二種類が並べられた。八戒は腸に収まるだけ食い続け、酒を五七杯飲んでまだ「大きな杯を持ってこい」と叫んだ。「もう各自の用事へ向かうべきだ。嫁ぐ者は嫁ぎ、取経の者は取経に行け」と言い張った。

女王が大杯を命じると近侍が鸚鵡杯・鸕鶿杓・金・玻璃盞・水晶盆など各種の杯に玉液を注いで一巡した。

三蔵が「お酒は十分いただきました。どうか関文に御印を」と言うと女王は従い、宝殿に上がって文牒を取り出させた。女王は一頁一頁確かめてから「御弟はまたの名を陳というのですか」と微笑んで、孫悟空猪悟能・沙悟浄の三名を添記し、御印を端正に押した。

悟空が関文を受け取ると、女王は路銀として砕いた金銀を盆に盛って差し出した。悟空が「出家人は金銀は受け取りません」と断ると、続いて綾錦十疋、最後に御米三升を差し出した。八戒が「飯」という言葉に反応してすかさず受け取り、行李に括り付けた。

三蔵が「弟子三人を城外まで送り出し、一言伝えてから戻ってまいります」と言うと、女王は何も疑わず再び大駕を整えて西城門から外へ出た。城内のすべての女人が水桶に水を満たし香を焚いて見送った。


城外に出ると悟空・八戒・沙悟浄が揃って出迎え「女王様、ここまでで結構です」と言った。三蔵が輦から降りて「どうかお帰りください」と一礼した。

女王が驚いて「御弟哥哥、一国の富をもって婿に迎えると申したのに」と三蔵の袖を掴むと、八戒が嘴を揺らして耳を振り「われら和尚がこんな粉骸骨と夫婦になれるものか。師匠を放せ」と叫んだ。女王は魂が飛ぶほど驚いて輦の中に座り込んだ。

沙悟浄が人垣を割って三蔵を引き出し、白馬に乗せた。

すると路傍から一人の女が現れて「唐御弟、どこへ行くのです。わたしと遊んでいかないの」と呼びかけた。沙悟浄が「無礼者め」と宝杖を振り下ろすと、女は旋風を起こして「ウー」と鳴り、三蔵をさらって霞の中へ消えた。

影も形もなく、どこへ連れ去られたかわからない。

烟花の網を脱したと思えば、また風月の魔が待ち構えていた。