西遊記百科
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第五十三回 禅主、餐を呑んで鬼孕を懐く——黄婆、水を運んで邪胎を解く

子母河の水を飲んで身ごもった三蔵と八戒を救うため、悟空が如意真仙と対峙し、落胎泉の水を求める。

孫悟空 猪八戒 三蔵法師 沙悟浄 子母河 解陽山 如意真仙 落胎泉

金兜洞を後にした師弟四人は大路を西へ進んだ。早春の景色の中、紫の燕がさえずり、黄鸝が歌い、地には落ちた花びらが錦のように広がっていた。

しばらく行くと前方に小さな川が現れた。水は澄んで清らかで、寒気を帯びた波がゆったりと流れていた。対岸の柳の陰に茅屋が数軒見えた。悟空が「あちらに渡し場があるでしょう」と言うと、八戒が大声で「渡し守よ、船を出せ」と呼んだ。

しばらくすると柳の陰から一艘の小舟が漕ぎ出してきた。梢取りは錦の頭巾を巻き、皮膚の粗い老婆だった。悟空が「女性が一人で梢取りか」と問うと、老婆は微笑みながら跳板を出した。師弟と白馬を乗せて川を渡り終えると、老婆は縄を杭に繋いで庄屋の中へ消えていった。

三蔵は澄んだ水を見て「少し渇いた」と言い、八戒に鉢盂で水を汲ませた。三蔵が半分ほど飲むと、八戒が残りをがぶがぶと飲み干した。馬を進めてほどなく、三蔵が「腹が痛い」と言い、八戒も「わしも痛い」と続いた。

沙悟浄が「冷たい水を飲みすぎたのでしょう」と言っているうちに二人の腹は急速に膨らみ、手で触れると血の塊のようなものが動いているのが感じられた。


路傍の草束を竿に挿した家があった。悟空が「あれは酒を売る家でしょう。熱湯を分けてもらいながら腹痛の薬を聞けます」と言い、師弟は立ち寄った。門の外には老婆が草の墩に座って麻を績んでいた。

悟空が事情を話すと、老婆は嬉しそうに笑って「子母河の水を飲みましたか」と言った。「この辺りは西梁女国です。あの川の水を飲むと胎気が起きる。三日後に迎陽館の照胎泉のほとりに行って照らすと、影が二つになって子が生まれるのです」と説明した。

三蔵が「出家の男の身でどうして子が」と驚くと、老婆は「出家か世俗かは関係ない。あの水を飲めば必ずそうなります」と答えた。八戒は腹を押さえながら「わしは男だ、どこから産道が開くというのだ」と嘆いた。沙悟浄が笑いをこらえて「二兄よ、よじって動かさないほうがいい。産前の病になるぞ」と言うと、八戒はますます青い顔になった。

「薬を飲んで落としてはいけませんか」と三蔵が問うと、老婆は「薬では無理です。南の解陽山の破児洞に落胎泉という泉があります。あそこの水を一口飲めば胎気が解けます。ただし今は如意真仙という道人が聚仙庵と改名してあの泉を守っており、花束や供え物の礼を持っていかなければ水を分けてもらえません」と言った。

悟空が「解陽山まで何里ですか」と問うと「三千里」と老婆は答えた。「よし、師匠は安心していてください。老孫が水を取ってきます」と悟空は笑顔で言い、大きな瓦鉢を借りて筋斗雲で飛び立った。


解陽山に着くと山の中腹に小さな庵があった。背陰の庄院に老道士が緑の芝の上に盤座していた。悟空が礼を尽くして事情を話すと、道士は「私は如意真仙の大弟子です。師匠に取り次ぎます。ご礼物はどちらに」と言った。悟空が「何も持ってきていません」と答えると、道士は「では礼物を持ってからまたおいでください」と言い、それでも中へ入って報告した。

如意真仙は琴を弾いていたが「孫悟空」の名を聞いた途端、顔色が変わった。道服を纏い、如意鈎を手に庵の門から飛び出してきた。

星冠に彩艳が飛び、金縷の法衣が赤く輝く。 足には雲靴、腰には宝帯が玲珑と回る。 手に持つ如意金鈎は蟒龍のように長く、 鋼の牙と赤い口が並び、額の髯が炎のように揺れる。

「孫悟空はどこだ。お前が我が甥の聖嬰大王を滅ぼしたと聞いた。我は牛魔王の兄弟、仇を取らずにいられるか」と叫んだ。

悟空が「令甥は今や観音菩薩の善財童子として良い境遇にいます。仇などではありません。どうか泉の水を」と言っても聞かず、如意鈎を振りかざして斬りかかった。二人は十数合戦ったが、悟空の棒が増すごとに真仙は退いて洞の中へ逃げ込んだ。

悟空が庵に入って水を汲もうとすると道士が井戸の前を塞いだ。さらに真仙が戻ってきて如意鈎で悟空の足を引っかけて転ばせた。悟空が立ち上がって棒を振るうと、今度は真仙が遠ざかって「水は汲ませない」と庵の入口に立ちふさがった。


悟空は一人では水が汲めないと悟り、村へ引き返して沙悟浄を呼んだ。「俺が表で戦っている間に沙兄弟が中へ入って水を汲め」と作戦を告げ、沙悟浄は吊桶と縄を持って一緒に飛び立った。

解陽山の庵の前で悟空が「開けろ」と叫ぶと、真仙が如意鈎を持って出てきた。二人が庵から離れて山坡の下で激しく戦っているその間に、沙悟浄は庵の中へ忍び込んだ。

道士が「誰だ」と行く手を塞ぐと、沙悟浄は降魔宝杖で道士の左腕を打ち折った。「お前を殺すのは惜しい」と言いながら道士を退かせ、吊桶を井戸に下ろして水をたっぷりと汲んだ。

「大哥、水を取った。もう引き上げよう」と空へ向かって叫ぶと、悟空は如意鈎を支えながら「わかった」と返した。そして「今日は甥のために仇と言うが、令甥は良い境遇にある。老孫が本気を出せば十人束ねても敵わない。調虎離山の計で欺いたことを恥じるがよい。以後、水を求める者を意地悪く拒むな」と言い残し、如意鈎を奪って四つに折ってから飛び去った。


村へ戻ると八戒は門柱に凭れて腹を抱えていた。老婆が花の磁器の盞に落胎泉の水を半分ほど注いで「細細とお飲みください。一口で十分です」と三蔵に渡した。八戒は「俺は吊桶ごと飲む」と言ったが、老婆が「そんなに飲めば腸まで溶けます」と引き止め、八戒も渋々半盞だけ飲んだ。

しばらくすると腸の鳴る音がして、二人は次々と厠へ駆け込んだ。何度か通ううちに、腹の張りが引き、血の塊が解けていった。老婆がさらに白米の粥を作ると、三蔵は二杯、八戒は十数碗おかわりした。

「坐月子の者は湯に浸かってはいけません」と沙悟浄が言うと、八戒は「俺は大産ではなく小産だから構わない」と言い張って、老婆に湯を沸かしてもらい手足を洗った。

翌朝、師弟四人は老婆に礼を述べて村を離れた。余った落胎泉の水を老婆に渡すと、老婆は大切そうに瓦の罐に移して地面に埋めた。

口の業を洗い浄めて身清らかに、凡胎を消化して体は自然に戻る。

師弟四人は再び西へと歩みを進めた。