第五十二回 悟空、金兜洞を大いに騒がせる——如来、密かに金剛琢の主を明かす
悟空が霊山の如来を訪ねると、如来はあの金の輪が老君の金剛琢であると明かす。老君が調べると青牛が金剛琢を盗んで逃げ出したことが判明し、老君は芭蕉扇を用いて青牛を降伏させる。三蔵・八戒・沙悟浄が解放され、一行は再び西へと旅立つ。
悟空は筋斗雲で霊鷲山に着き、山門の守護神に「斉天大聖が如来に拝謁を願う」と告げると、阿難・迦葉が出迎えて宝殿へ案内した。
如来は高座に就き、三千の仏と五百の羅漢が左右に侍っていた。悟空が礼拝して独角兕大王との一連の経緯を話すと、如来は静かに聞いていた。
「あの金の輪について何かご存知ですか」と悟空が問うと、如来は微笑んで「知っている。しかしそなたに教えれば、彼は怒って私のところへ文句を言いに来るだろう」と言った。
悟空が「どうかお教えください。師匠を救い出したいのです」と重ねて頼むと、如来は言った。
「あれは金剛琢という。もともと太上老君の宝物だ。老君は道の根源を一つの輪に凝縮した。あらゆる仏器・仙器・神器をも収めることができる。老君が修行のとき常に身に帯びていたものだ」
「では老君の宝物がなぜ妖怪の手に」と悟空が問うと、如来は「老君が八卦炉で丹を錬じていたとき、傍らに青牛がいた。炉の火が燃えている間、青牛は輪を見て欲しがった。老君が少し目を離した隙に青牛は輪を呑み込んで三十六天を駆け降り、金山に洞を構えて大王を名乗った。老君もそれに気づかず探していたところだ」
如来は阿難に「老君のところへ使いを送れ」と命じた。しばらくすると老君が白牛に乗って霊山へやってきた——しかしその白牛こそ老君が常に乗っている牛であり、金山の青牛とは別の牛だった。
老君が礼拝して「あの猴子に手を焼いているとは聞いていたが、金剛琢の件とは」と驚いた。「お手元の扇を使えば取り戻せましょう」と如来が言うと、老君は「そういうことか」と芭蕉扇を取り出した。
「孫悟空、一緒に来い」と老君は言い、悟空と連れ立って金山へ向かった。
金山の洞門前で悟空が「妖怪、出てこい」と叫んだ。妖怪は「また来たか猿め、棒を取り戻したところでこの輪には勝てぬ」と点鋼槍を持って出てきた。
老君が雲の上から芭蕉扇を扇ぐと、扇から一条の金光が飛び出して妖怪の鼻を照らした。妖怪の鼻孔の中から白く光る輪がするりと引き出された——金剛琢だった。
輪が戻ると妖怪は本来の姿を現した。一頭の大きな青い牛だった。角は一本、体は青藍色で筋肉が隆々としている。老君は縄で青牛の鼻孔を通して手綱とし、青牛を連れて天上へ帰っていった。
哪吒の六件の宝物も金剛琢から出てきた。李天王と哪吒は天宮へ戻り、火の神・水の神たちもそれぞれ持ち場へ戻った。
悟空は棒を構えて洞の中へ飛び込んだ。小妖たちは大王を失って戦意を失い、散り散りに逃げた。悟空が奥の広間まで進むと、縛られた三蔵・八戒・沙悟浄が壁に括り付けられていた。
縄を解いてやると八戒は「師兄、腹が減った。何か食わせてくれ」と言い、悟空は「まず洞を出ろ」と叱った。白馬と行李も奥の倉庫に無事だった。
洞の外へ出ると三蔵が「悟空、よく助けに来てくれた」と涙をこぼした。悟空は「老君の金剛琢が原因でした。如来のお知恵で解決しました」と報告した。
八戒は「あの輪一つに天上の神々をことごとく負かすとは」と舌を巻いた。沙悟浄は「強さとは武器ではなく、その来歴にある。老君の宝物には万物の法則が宿っていたのだ」と言った。
三蔵が馬に乗り、八戒が行李を担ぎ、悟空と沙悟浄が左右に従った。師弟四人は金山を後にして大路を見つけ、再び西へと向かった。
青牛は天上に連れ戻され、金剛琢は老君の手に戻り、金兜洞は空の廃墟となった。
法宝は主ある時にのみ力を持つ。道は高く魔は強くとも、その根を知る者がいれば必ず解が開ける。