西遊記百科
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第五十一回 心猿、空に棒を振る——金箍、自ずから縛りをもって降伏す

如意金箍棒を奪われた悟空は玉帝に助けを請い、天の星官たちが総出で挑むが、独角兕大王の金剛琢にすべてを吸い込まれてしまう。火の神も水の神も通用せず、悟空は蠅に化けて洞穴へ潜入し、ついに棒を取り戻すが、金剛琢を盗もうとする夜の試みは、大王の執念に阻まれることになる。

孫悟空 猪八戒 三蔵法師 沙悟浄 独角兕大王 金刚琢 李天王 哪吒

悟空は筋斗雲で金洞を離れ、三蔵が囚われていることを八戒・沙悟浄に告げた。「師匠を救うには先ず棒を取り戻さなければ。俺は天宮に訴えに行く」と言い残して雲を踏んで南天門へ向かった。

霊霄宝殿に至ると、四大天王が「大聖が来た」と告げた。玉帝は文武諸臣を従えて宝座に就いており、悟空が三拝して事の次第を述べると、玉帝は「下界の妖怪があそこまで横暴とは」と眉をひそめた。

「二十八宿のうち誰か欠けた者はいるか」と問うと、太白金星が検閲して「各星官、一柱も欠けておりません」と答えた。「では妖魔の正体は何者か」と問うても誰も答えられなかった。

悟空は「どうか天将を遣わして助太刀をお願いします。棒を取り戻し師匠を救い出したい」と訴えた。玉帝は托塔天王・李靖と三太子・哪吒に「五営の天兵を率いて孫大聖を助けよ」と命じた。


師弟四人が金山の麓に陣を張ると、悟空が洞門前へ飛んで「棒を返せ、師匠を返せ」と叫んだ。妖怪が大王の指示を受けた小妖たちを引き連れて出てきた。

哪吒が六件の宝物——乾坤圈・混天綾・火輪・風火輪・火尖槍・陰陽剣——を取り出して一斉に妖怪へ投じた。妖怪は少しも慌てず白い輪を「著」と叫んで空へ投げた。

輪は空中でくるりと回ると哪吒の六件の宝物をすべて巻き取って洞の中へ消えた。哪吒は空手になって「大聖、あの輪の来歴が知れぬ。俺の宝物がすべて奪われた」と言った。

李天王の天兵が鼓を鳴らして攻め寄せると、妖怪は「来るなら来い」と構えた。悟空が棒の代わりに手を使って戦ったが素手では限りがある。妖怪を追うと「棒もなくてよく戦う猿め」と笑われた。


悟空は天宮へ戻り「火の神を借りたい」と申し出た。玉帝は火部の神々——火徳星官・朱雀・南方火神——を遣わした。神々が炎を吹いて金洞を焼こうとすると、妖怪は輪を一転させて炎を巻き取ってしまった。火の神たちも手を引かざるを得なかった。

「では水の神を」と悟空が頼むと、東海龍王・敖広が四海の龍王を引き連れて雨を降らせた。水が洞を満たそうとすると、妖怪は輪で水流をすべて吸い込んだ。「水も火も無駄か」と悟空は頭を抱えた。


悟空は独りで思案した。「あの輪は何者の宝物か。天に問うても誰も知らない。まず洞の中の実情を探ろう」と一本の毛を抜いて蠅に変化させ、本体も蠅となって洞門の隙間から入り込んだ。

奥の広間では妖怪が台座に座り、左右に小妖が控えていた。棒は大王の脇に立てかけてあり、哪吒の六件の宝物は棚に並べてあった。金の輪は妖怪の腕にはめられていた。

悟空は台座の傍らを飛んで棒の近くへ寄った。毛を一本抜いて「変」と呼ぶと錠前外しの鍵に変え、かすかに音を立てないよう棒に触れた。「棒よ、縮め」と念じると棒が針ほどに縮んだ。悟空は針を咥えて蠅のまま洞の外へ飛び出した。

洞を出ると本体に戻り「棒よ、戻れ」と言うと金箍棒が元の寸法に伸びた。「師匠は後で救おう。今度は輪を奪わなければ」と悟空は夜を待った。


夜が更けると悟空は一本の毛を蟋蟀に変化させ、本体も蟋蟀となって洞へ潜り込んだ。広間は蝋燭が消えて暗く、小妖たちは床に倒れて眠っていた。

妖怪は台座ではなく奥の寝所に横たわっていた。悟空は眠る妖怪の腕を見ると、金の輪はしっかりと腕にはまったままだった。眠っていても輪を外していない。

悟空は輪の端に触れて引こうとしたが、眠りながら妖怪の腕がわずかに動いた。まるで輪の動きに気づいているかのようだった。何度試みても輪は外れない。夜が白み始めると悟空は洞を出た。

「棒は取り戻したが輪の秘密がわからない。このままでは師匠を救えない。誰かに教えを乞わなければ」と悟空は筋斗雲を踏んで西の方角——霊山へ向かった。

道は一尺高くも魔は一丈高し。輪の来歴を解く鍵は、天にも地にもまだ見えていなかった。