西遊記百科
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第50回 情、性を乱して愛欲に因る——神昏み心動いて魔頭に遇う

通天河を渡り、凍てつく山道をゆく師弟四人。悟空が食料を調達しにいった隙に、三蔵は八戒にそそのかされて魔除けの円の外へ踏み出し、独角兕大王が仕掛けた妖術の罠に落ちてしまう。

孫悟空 猪八戒 三蔵法師 沙悟浄 独角兕大王 金山 金洞

心地頻頻に掃い、塵情細細に除け。 坑堑をして毗盧を陥れしむる勿れ。本体常に清浄にして、方に元初を論じ可し。 性燭は須く挑剔すべく、曹溪任ずるに吸呼を。 猿馬に気声の粗きを令む勿れ。昼夜綿々と息を継げば、方に功夫を顕すなり。

通天河の厚い氷の難を脱した師弟四人は、老鼋の背に乗って対岸に上がり、大路を西へ進んだ。厳冬の景色の中、樹林の煙は漠々として淡く、山の骨は棱々として清らかだった。


しばらく行くと前方に高い山が立ちはだかった。路は細く崖は高く、石が多く嶺は険しい。三蔵が「気をつけよ」と言うと悟空は「怖れることはありません。兄弟三人、心を合わせて妖怪を降します」と答えた。

谷口を越えて山を見上げると山深く一段の楼台が見えた。三蔵が「あそこに宿を借りて斎を化けてもらおう」と言うと、悟空が目を凝らして「師匠、あそこは凶雲が立ちこめています。妖怪が人を誘い込む幻の楼台です。近づいてはなりません」と制した。

「では師匠が腹を空かせているから」と悟空は三蔵を平地に降ろし、「ここで待っていてください」と言って金箍棒で地面に一つの圈を描いた。

「老孫が描いたこの圈は、銅の壁・鉄の城にも勝ります。虎狼妖魔も近づけません。ただし必ず圈の外に出ないでください。出れば必ず災いに遭います」と厳しく言い含めて空へ飛んでいった。


悟空が南の村で斎を手に入れて戻ると、平地に描いた圈だけが残り、師匠も馬も弟子たちも消えていた。楼台も影形もなく、ただ山の根元の怪石があるだけだった。「やはりあの妖怪の手にかかったか」と悟空は馬の蹄跡を辿って西へ向かった。

実は三蔵が圈の中で長く待っていると八戒が「あの猿はどこへ遊びに行った。こんな棒の線が虎を止められるか。ここは風をよけられないし寒い。師匠、先に歩いていれば師兄が斎を持って追いつくでしょう」と言って三蔵を説得したのだ。三蔵は圈から出て楼台へ向かってしまった。

楼台は中に入ると静まりかえって人の気配がなかった。八戒が奥の階上へ上がると象牙の寝台に骸骨が横たわっていた。近くに色鮮やかな箱に三着の纳锦の背心があった。八戒は「寒いし、ちょっと借りよう」と三着とも取り出してきた。

三蔵は「律に言う、公に取ることも窃に取ることも全て盗みだ。戻しなさい」と言ったが、八戒は「誰も見ていないし、誰が告げるものか」と聞かず、自分も沙悟浄も背心を着けた。

帯を締めた途端、二人はふらついて転倒した。背心が縛り紐に変化して二人の手を後ろ手に縛り上げていた。三蔵が慌てて解こうとしても解けない。三人が叫んでいると、楼台が消えた——妖怪が点化した幻の仙荘だった。

妖怪は小妖を連れて現れ、三蔵・八戒・沙悟浄を捕まえて洞へ連れ込んだ。白馬も行李も没収した。妖怪が台座から「どこの和尚だ。白昼に俺の衣服を盗んだか」と問うと、三蔵は事の経緯を話して「弟子たちが勝手に着てしまいました」と詫びた。

妖怪は「唐僧の肉を食えば発白還黒・齒落更生と聞く。幸い向こうから来てくれた。お前の大弟子の名は何だ。どこへ斎を化けに行ったのか」と問い、八戒が「師兄は五百年前に天宮を乱した齊天大聖孫悟空です」と答えると、妖怪は少し怯えた顔をした。「あの者は神通広大だとは聞いている」と呟き、「唐僧たちを後ろに縛り上げておけ。あの猴子を捕まえてから一緒に蒸して食おう」と命じた。


悟空が五六里進むと北の坡外に老人がいた。毡の衣に暖かい帽子、油靴を履いて龍頭の拐棒を持ち、童仆が腊梅の枝を折って後ろに続いていた。

悟空が問いかけると「お前たちの一行を見た。あの長い嘴の者と晦気色の顔の者と白い顔の太った和尚が迷いこんで妖魔の口に入ってしまった」と老人は言った。「この山を金山という。山の前に金洞があって独角兕大王という妖怪がいる。神通広大で手強い。師匠を救いに行けばお前も危ない」

悟空が感謝して「必ず行く」と斎飯を老人に渡すと、老人は本来の姿を現して「大聖、私どもはこの山の山神・土地です。お待ちしていました。斎飯は預かって師匠をお救いになってから差し上げます」と跪いた。

悟空は「知っているならなぜ早く言わなかったのか」と叱り、棒を取って金洞へ向かった。洞門前で「孫悟空が師匠を返しに来た。早く出せ」と叫ぶと、小妖が大王に報告した。

大王は喜んで「この機会に武芸を試してやろう」と十二尺の点鋼槍を持って出てきた——

独角が参差として、双眸が晃亮とする。 頂上の粗い皮が隆起し、耳の根の黒い肉が光る。 舌が長くて時に鼻をかき混ぜ、口が広くて版牙が黄色い。 毛皮は青くして靛のごとく、筋は鋼のごとく硬い。

悟空が「師匠を返せ。言わなければ死に場所すら与えない」と叫ぶと、妖怪は「師匠とやらは俺の衣服を盗んだ。それを返しに来たのか」と言い、点鋼槍を突き出した。

二人は三十合戦って互角だった。妖怪が「よい猿め、天宮を乱した本物の実力だ」と褒めると、悟空も「よい妖怪め、なかなかの槍法だ」と認めた。さらに二十合戦ったところで妖怪が小妖たちを呼んで囲み攻めにかかった。

悟空は「来い来い、丁度いい」と棒を空へ放り投げて「変」と叫ぶと、棒が千百本に分かれて蛇のように乱れ落ちた。小妖たちが散り散りに逃げ込むと、妖怪が袖の中から白くて光り輝く輪を取り出し「著」と叫んで空へ投げた。

輪が金箍棒をくるりと巻き取って持ち去ってしまった。

悟空は空手になって筋斗雲で逃げ出した。妖怪は勝ち誇って洞の中へ引き上げた。

道は一尺高くも魔は一丈高い。性が乱れ情が昏れて間違った道を踏んだ。法身に安らぐ座の位なく、その時の動いた念頭が差であった。