第5回 大聖、蟠桃を乱して丹を盗む——天宮に反して諸神、怪を捕らえんとす
斉天大聖は蟠桃園の管理を任されながらも、密かに仙桃を食らい、瑶池の宴をめちゃくちゃにし、さらには太上老君の金丹まで盗み食らってしまった。激怒した玉皇大帝は、十万の天兵を差し向けて花果山を包囲する。
さて、斉天大聖というのは所詮は妖猿のこと、官職の品階などまるで気にかけず、俸禄の高低を問うでもなく、名前を登録簿に記してもらえれば、それで満足であった。斉天府の二司の仙官たちが朝夕に傍仕え、日に三度の食事を摂り、夜は一床に眠り、何も煩わすものなく、自由気ままに暮らしていた。暇な折には友を訪ねて宮殿をめぐり、あちこちで義兄弟の契りを結んだ。
三清に会えば「老」の字でもって呼びかけ、四帝に臨んでは「陛下」と頭を垂れた。九曜星・五方将・二十八宿・四大天王・十二元辰・五方五老・普天の星宿・河漢の群神に至るまで、みな兄弟のように付き合い、互いに気安く呼び合った。今日は東へ遊び、明日は西へ漂い、雲のように行き雲のように帰り、行方の定まることがなかった。
ある日、玉皇大帝が朝廷に臨御されると、班列のなかから許旌陽真人が進み出て、額を床に擦りつけて申し上げた。「ただいま斉天大聖は何の職も持たず暇のままに遊び歩き、天上の星宿たちと交わって、身分の高低を問わず誰とでも友と呼んでおります。このまま放置すれば、暇に任せてまた事を起こしかねません。何か職事をお与えになれば、余計な騒ぎを防ぐことができましょう。」玉皇大帝はこの言葉を聞き届け、直ちに詔を下された。
猴王は喜々として参上し、言った。「陛下、詔でお召しとは、何かご褒美でもいただけますか。」玉皇大帝は仰せになった。「そなたが暇を持て余しているようなので、一つ職事を与えることにした。蟠桃園を管理し、朝夕よく気を配るがよい。」大聖は喜び勇んで御恩を謝し、朝廷に礼を捧げて退出した。
居ても立ってもいられず、大聖はそのまま蟠桃園に踏み込んで視察を始めた。園の土地神が行く手を塞いで問いかけた。「大聖、どちらへ?」大聖は言った。「玉帝より蟠桃園の管理を命じられた。今日は視察に来たのじゃ。」土地神はあわてて礼を施し、園内で働く樹木の手入れ担当の力士・水運び担当の力士・桃の世話担当の力士・清掃担当の力士たちをみな呼び集めて大聖に引き合わせ、園の中へと案内した。
そこに広がる光景といえば:
夭夭たり灼灼たり、颗颗たり株株たり。 鮮やかに燃ゆる花は梢を埋め、重なる実は枝をしならせる。 実は枝頭に垂れてまるで錦の毬、花は樹上に簇がって胭脂の色。 千年ごとに熟れるは時を選ばず、万年の遅遅たる間に変わらぬ美しさ。 熟れたるものは頬を赤らめて酔いたるごとく、まだ青きものは蔕を帯びて翠の肌。 霞の凝りたる肌には緑を帯び、日に映えてはあでやかな紅を見せる。 樹の下には奇しき花と珍しき卉が四季を問わず色鮮やかに咲き誇り、 左右には楼台と館舎が並び、空には常に彩雲と霓がたなびく。 これは玄都の凡俗の種にあらず、瑶池の王母みずから培われたるもの。
大聖はしばらく眺め渡し、土地神に尋ねた。「この木は全部で何株あるか。」土地神は答えた。「三千六百株ございます。手前の千二百株は花も地味で実も小さく、三千年に一度熟れます。これを食べた者は仙人となって道を得、体は軽やかになります。中ほどの千二百株は花も甘く実も豊かで、六千年に一度熟れます。これを食べた者は霞に乗って飛び昇り、不老長生を得ます。奥の千二百株は紫の文と薄黄の核を持ち、九千年に一度熟れます。これを食べた者は天地と齢を同じくし、日月と寿命を同じくします。」大聖はこれを聞いてこの上なく喜んだ。その日は株の数を確かめ、亭や閣の配置を確認してから府へ帰った。それ以来、三日から五日に一度の割合で蟠桃園に赴いて楽しむようになり、友人の訪問も他所への遊びも一切しなくなった。
ある日、老木の梢に大半の桃が熟れているのを見て、大聖は一つ味見がしたくなった。しかし園の土地神と力士たち、そして斉天府の仙官たちがぴったりと付き添っていて、どうにも手が出せない。そこで一計を案じ、「お前たちは門の外で待っておれ。わしはこの亭でしばし休む。」と告げた。仙官たちが皆退くと、猴王は冠と衣装を脱ぎ、大樹に登って熟れ熟れの大きな桃を次々と手折り、樹の枝の上で心ゆくまで食した。一腹いっぱい食べてから木を下り、冠と衣をまとい直して従者たちを呼び、府へと戻った。二三日経つとまたこの手を使って桃を盗み食い、飽きるほどに楽しんだ。
ある朝、王母娘娘が宴を催し、宝閣を大きく開いて、瑶池にて蟠桃の盛会を開くことになった。そこで紅衣の仙女・青衣の仙女・素衣の仙女・黒衣の仙女・紫衣の仙女・黄衣の仙女・緑衣の仙女の七人に、それぞれ花籠を頭に載せて蟠桃園へ桃を摘みに行かせた。七人の仙女が園の門まで来てみると、蟠桃園の土地神と力士たち、それに斉天府の二司の仙官たちが門を守っていた。
仙女たちが近づいて言った。「わたくしどもは王母娘娘の御命令で、仙桃を摘みに参りました。」土地神は言った。「仙娥さま方、少々お待ちを。今年は例年とは違います。玉帝が斉天大聖をここの管理者にお任命になりましたので、大聖にご報告してからでないと、園を開けることができません。」
仙女が尋ねた。「大聖はどこにおられますか。」土地神は言った。「大聖は園の中におられますが、お疲れになって亭の上でお休みになっています。」仙女は言った。「それならば探してまいりましょう。お時間をかけてはなりません。」土地神も一緒に中へ入った。
花の亭まで来てみると、大聖の姿はなく、衣冠だけが亭に残されており、どこへ行かれたか見当もつかない。実は大聖はしばらく遊んで桃を数個食べたのち、二寸ほどの小さな姿に化けて、大樹の梢の茂った葉の陰で眠り込んでいたのだった。七人の仙女は言った。「わたくしどもは御命令で参りましたのに、大聖が見つかりません。空のままでは戻ることもできません。」傍にいた仙使が言った。「仙娥さま方は御命令を受けてのご参上ですから、迷うことはありません。大聖は遊び歩くことにお慣れになっているので、きっと友人にお会いしに園を出られたのでしょう。どうぞ桃をお摘みください。わたくしどもが大聖にご報告しておきます。」
仙女たちはその言葉に従い、木立の中へ入って桃を摘み始めた。まず手前の木から二籠、次に中ほどの木から三籠を摘んだ。奥の木まで来て摘もうとすると、枝には花と実がまばらで、毛羽立った蔕に青い皮をつけたわずかばかりの桃しかなかった。熟れた桃はみな猴王に食べられてしまっていたのだ。七人の仙女が東西を見渡すと、南に伸びた枝の先にただ一つ、半分赤く半分白い桃が残っていた。
青衣の仙女が枝を手繰り寄せると、紅衣の仙女がその桃を摘み取り、枝をそっと元に戻した。
実はその枝に大聖が化けて眠っていたのであった。目を覚ました大聖は、すぐさま本来の姿に戻り、耳の中から金箍棒を引き出し、ひと振りすると椀ほどの太さになった。どんと声を上げて叫んだ。「お前たちはどこの化け物だ。大胆にも我が桃を無断で摘もうとは。」七人の仙女はあわてて一斉にひざまずいた。「大聖、どうかお怒りをお静め下さい。わたくしどもは妖怪などではございません。王母娘娘がお遣わしになった七人の仙女で、仙桃を摘んで宝閣にて蟠桃の盛会を催すために参りました。こちらへ来ました際、まず園の土地神さまたちにお目にかかり、大聖をお探し申しましたが見つかりませんでした。王母娘娘の御命令が遅れては申し訳ないと存じ、やむを得ずここで先に桃を摘み始めた次第でございます。何とぞお赦し下さいませ。」
大聖は怒りを解いて打って変わって機嫌よくなり、言った。「仙娥たちよ、立ちなさい。王母が宝閣を開いて宴を催すとは、誰を招いたのか。」仙女たちは言った。「例年の仕来たりで、西天の仏陀・菩薩・聖僧・羅漢、南方の南極観音、東方の崇恩聖帝・十洲三島の仙翁たち、北方の北極玄霊、中央の黄極黄角大仙、これが五方五老でございます。さらに五斗の星君、上の八洞の三清・四帝・太乙天仙たちの衆、中の八洞の玉皇・九垒・海岳の神仙たち、下の八洞の幽冥の教主・注世の地仙たち、各宮各殿の大小の尊神が、皆そろって蟠桃の嘉会へお集まりになります。」
大聖は笑って言った。「わしも招かれているか?」仙女は言った。「存じません。」大聖は言った。「わしは斉天大聖ぞ。わし老孫を席の上座にお招きして、何が悪い?」仙女は言った。「それは例年の仕来たりで決まっておりますので、今年がどうかは存じません。」
大聖は言った。「それはそうだな。お前たちを責めるのは筋違いだ。ここでしばらく待っておれ。老孫が先に様子を探りに行って、招かれているかどうか確かめてこよう。」
さてこの大聖、印を結んで呪文を唱え、七人の仙女に向かって叫んだ。「止まれ!止まれ!止まれ!」これは定身法という術で、七人の仙女は一人残らず目を見開いたまま白眼になり、桃の木の下に立ち尽くした。大聖は吉祥雲に飛び乗り、蟠桃園を飛び出して瑶池へと向かう道を一直線に進んでいった。
ちょうどそのとき、向こうの方から:
天一面の瑞霭は揺らめき光り、五色の祥雲は絶えず飛んでいく。 白鶴の鳴き声は九皋に響き渡り、紫の霊芝は千葉に色鮮やかに分かれる。 その中に現れたる一柱の仙人、その容貌は天然の風采を別けている。 神は虹霓を舞わせて天空を照らし、腰には宝籙を帯びて生滅を超えている。 名を赤脚大仙と称し、蟠桃の寿節を祝うために特にやって来たのだ。
赤脚大仙と正面から出くわした大聖は、低頭して一計を案じた。この真仙を騙して先に宴の様子を探ろうというわけだ。「老道はどちらへ?」と問うと、大仙は言った。「王母に招かれて蟠桃の嘉会へ参るところです。」大聖は言った。「それはご存知なかったのですか。玉帝が老孫の筋斗雲の速さを見込んで、老孫に五つの道を行って列席の方々をお呼びするよう命じました。まず通明殿で礼を演じてから、それから宴へ参るのだと。」
赤脚大仙は正直者であったので、この嘘をそのまま真に受け、「例年は瑶池でそのまま礼を演じて御恩に感謝するものですが、どうして通明殿で礼を演じてから瑶池の宴へ参るのでしょう」と納得しかねながらも、やむなく祥雲を転じて通明殿の方へ向かっていった。
大聖は雲に乗って呪文を唱え、身を揺すって赤脚大仙の姿に変じ、瑶池へ向かって進んでいった。じきに宝閣に着くと、雲を止め、するりと中へ足を踏み入れた。
そこに広がる光景といえば:
琼香が立ちこめ、瑞霭が色とりどりに舞う。 瑶台には彩が敷かれ、宝閣には氤氲の気が漂う。 鳳は飛翔し鸾は舞って、その形はたゆたうように幻だ。 金の花と玉の萼がその影を浮かべては沈める。 上には九鳳の丹霞の屏風と八宝の紫霓の墩が並べられ、 五彩の金彩の卓に、千の花の碧玉の盆が置かれている。 卓の上には龍の肝と鳳の髄、熊の掌と猩猩の唇。 百の珍味はどれも美しく、珍しき果実と佳肴はそれぞれに新鮮だ。
一面は整い備わってはいたが、まだ仙人たちは誰一人来ていなかった。
大聖があちこち見物していると、ふと酒の香りが鼻を打った。振り返ると、右の長廊の下に、酒を造る仙官たちと酒粕を処理する力士たち、水を運ぶ道士たち、火を焚く童子たちがいて、瓶や甕を洗い清め、すでに玉液琼浆・香醪佳醸を造り上げていた。大聖は口の端から涎が垂れるのを止められず、すぐにでも飲みたかったが、あの連中がいて手が出せない。
そこで神通を使った。毫毛を何本か引き抜いて口の中で噛み砕き、プッと吹きかけて、呪文を唱えた。「変われ!」するとそれは居眠り虫に変じて、その場にいた者たちの顔に飛びかかった。見れば一群の人々は手が萎え、頭が下がり、目を閉じて、道具を置いたまま皆そろってうとうとし始めた。大聖はそこで百味の珍馐と佳肴を手づかみにし、長廊の奥へと持ち込み、甕に凭れかかり瓶に寄りかかりながら、心ゆくまで飲み食いした。
散々に飲み食いして、ほろ酔い気分になった頃、大聖はひとり考えた。「いかん、いかん。そろそろ客が来る頃だ、咎められてしまうぞ。いまのうちに捕まったら一大事だ。さっさと府へ戻って寝てしまおう。」
さてこの大聖、ふらふらと揺れながら酒の勢いに任せて気ままに歩いているうちに、道を間違えてしまった。斉天府ではなく、着いてしまったのは兜率天宮であった。気がついて大聖は思った。「兜率宮は三十三天の上、離恨天にある太上老君の宮殿ではないか。なぜこんな所へ迷い込んだのか。まあいい、どうせいつか来ようと思っていたのに来る機会がなかったのだ。この機会にちょっと訪ねてみるのも悪くはあるまい。」そのまま衣装を整えて中に踏み込んでみると、老君の姿はどこにもなく、人っ子一人いない。実は老君は燃灯古仏とともに三層の高閣の朱陵丹台の上で法を説いておられ、仙童・仙将・仙官・仙吏たちがみな左右に侍立して聴いているところだったのだ。
大聖は丹房の中まで進んで探したが、誰も見つからなかった。ただ、丹炉の傍らで火がくすぶっており、炉の左右には五つの葫芦が置かれ、中にはすでに練り上げられた金丹がぎっしりと収まっているのが見えた。大聖は喜んで言った。「これは仙家の至宝ぞ。老孫は悟りを開いてより内外相通の理を究めておるから、わしも金丹を練って人々を救いたいとかねてより思っていたのだが、帰ってから暇がなくてできなかった。今日はまたとない縁、ここにこうしてあるではないか。老子がいない間に、いくつかいただいてみようではないか。」葫芦をすべてひっくり返し、中の金丹を炒り豆でも食べるようにざくざくと食べてしまった。
やがて丹のおかげで酔いも醒めてきた。大聖はまた自らに言い聞かせた。「いかん、いかん。この騒ぎは天よりも大きな災いになるぞ。玉帝に知られたら命がない。行け、行け、行け。下界へ下って王様になるのが一番だ。」兜率宮を飛び出し、元の道を避けて西天門から隠身の術を使って逃げ出し、雲を花果山の上に止めると、故郷へと帰り着いた。見れば旌旗が輝き、戈や戟が光を放っており、四健将と七十二洞の妖王たちが武芸を練習していた。
大聖は高らかに呼ばわった。「皆の者、戻ったぞ!」衆の怪たちは武器を投げ置いてひざまずいた。「大聖さま、ずいぶんとご無沙汰でした。長い間ほったらかしにされて。」大聖は言った。「そんなに経ってはおらん、そんなに経ってはおらん。」
語らいながら歩いて、洞の奥へと進んだ。四健将が掃き清めて休めるようにすると、礼を尽くして拝した後、みなが尋ねた。「大聖さまは天にて百年余り、いかなるご職分でいらっしゃいましたか。」大聖は笑って言った。「わしにはまだ半年ほどの気がするが、百年とはどういうわけじゃ。」健将が言った。「天での一日は下界では一年でございます。」
大聖は言った。「まずもって今回は玉帝がわしを重んじてくださり、本当に斉天大聖に封じていただけた。斉天府も一座設けられ、安静・寧神の二司も置かれて、仙官たちが仕えてくれた。その後、わしが手持ち無沙汰でいるのを見て、蟠桃園の管理を任せてくれた。このほど王母娘娘が蟠桃の大会を催すことになったが、わしを招待しなかったのじゃ。それならば招待されずとも先に乗り込んでやろうと、瑶池へ赴いて仙品も仙酒もみな食べ飲みしてしまった。瑶池を出たらふらふらと誤って老君の宮殿に入り込んでしまい、五つの葫芦の金丹もすべて食べてしまった。玉帝に罪を問われるのを恐れて、天門から下りてきたのじゃ。」
衆の怪たちはこれを聞いて大いに喜んだ。すぐに酒と果物を並べて歓迎の宴を設け、椰子の酒を大きな椀に注いで差し上げた。大聖はひと口飲むと、顔をしかめて言った。「うまくない、うまくない。」
崩・芭の二将が言った。「大聖さまは天宮で仙酒・仙肴を召し上がりましたから、椰子酒ではご満足いただけないのでしょう。昔から言いますように、『うまかろうがまずかろうが、故郷の水』でございます。」大聖は言った。「お前たちこそ『親しかろうが親しくなかろうが、故郷の人』じゃ。今朝わしが瑶池で飲んでいたとき、長廊の下に酒瓶や甕がたくさんあって、みんな玉液琼浆だった。お前たちにはまだ飲ませてやれなかったが、もう一度行って何瓶か盗んで来よう。半杯ずつ飲めば、お前たちもみな不老長生になれる。」衆の猿たちは喜び勇んだ。
大聖はすぐに洞を出て、またひと筋斗雲で隠身の術を使って蟠桃会の席へ一直線に戻り、瑶池の宮阙に入ってみると、酒造り・酒粕処理・水運び・火焚きの者たちはまだ鼾をかいて目を覚ましていなかった。大聖は大きな酒瓶を左右の脇に一本ずつ、両手にそれぞれ一本ずつ抱えると、雲を翻して花果山に引き返し、衆の猿たちを集めて仙酒の宴を開き、みなして幾杯かを飲み交わし、存分に楽しんだことは申すまでもない。
さて、七人の仙女は大聖の定身法の術を受けてから、ちょうど一周天が経ってようやく解けた。それぞれ花籠を手に持って王母娘娘のもとへ帰り、申し上げた。「斉天大聖が術をかけてわたくしどもを縛り付けましたため、遅くなってしまいました。」王母が尋ねた。「お前たちは蟠桃をどれほど摘んできたか。」仙女たちは答えた。「小さい桃を二籠、中くらいの桃を三籠だけです。奥の大きな桃は一つも残っておらず、きっと大聖がみな盗み食いされたのでしょう。ちょうど探していたところへ大聖が現れ、乱暴を働き、宴に誰を招いたのかとお訊きになりました。わたくしどもがこの度の宴のことを一通りお話し申し上げたところ、大聖はわたくしどもを縛り付けてどこかへ行ってしまいました。今になってようやく術が解けて戻って参りました。」
王母はこれを聞いて、すぐに玉帝にお目にかかって事の次第をすべて申し上げた。まだ話し終わらないうちに、酒造りの一班の者たちが仙官たちとともに参上して奏上した。「何者かが蟠桃の大会を荒らし、玉液琼浆を盗み飲みいたしました。百の珍馐もすべて盗み食いされました。」続いて四人の大天師が奏上した。「太上道祖が参られました。」
玉帝は王母とともに出迎えられた。老君は礼を終えると言った。「老道は宮中にて九転の金丹を練り、陛下のために丹元の大会に備えておりましたところ、賊に盗まれてしまいました。特に陛下にご報告申し上げます。」玉帝はこれを聞いて身を縮めた。
しばらくして、斉天府の仙官たちが額を床に擦りつけて奏上した。「孫大聖は職務をお守りにならず、昨日より出かけたまま、今に至るも戻られず、行方も知れません。」玉帝はまた心配を増やした。すると赤脚大仙が進み出て奏上した。「臣は王母の詔を受けて昨日宴へ参りましたところ、途中で斉天大聖に出くわしました。大聖が申すには、万歳の御命令で、自分が臣どもを招いてまず通明殿で礼を演じてから宴へ参るようにとのこと。臣はその言葉に従って通明殿の外まで行きましたが、万歳の龍の御車も鳳の御輿も見えず、あわてて戻ってまいりました次第。」玉帝はいよいよ大いに驚かれて仰せになった。「あやつ偽の御旨を伝えて、お前をたばかったのか。急ぎ糾察の霊官にあやつの所在を探らせよ。」
霊官は命を受けて殿を出て隈なく調べ、詳細をすべて掴んで戻り、奏上した。「天宮を乱したのは斉天大聖にございます。」そしてこれまでの一切をすべて申し上げた。玉帝は大いに怒り、直ちに四大天王と李天王・哪吒太子に命じ、二十八宿・九曜星官・十二元辰・五方揭諦・四値功曹・東西の星斗・南北の二神・五岳四渎・普天の星宿、合わせて十万の天兵を招集し、十八架の天羅地網を張って下界の花果山を囲み、必ずやあやつを捕えて成敗するよう命じた。衆神はただちに兵を起こして天宮を出発した。そのさまといえば:
黄色い嵐が渦巻いて天を暗くし、紫の霧が立ちこめて大地を覆う。 妖猿が上帝を欺いたがためにこそ、諸聖の衆が凡世へと下ることとなった。 四大天王は全軍を統率し、五方揭諦は多くの兵を動かす。 李托塔は中軍にて号令を掌り、猛き哪吒は前部の先鋒を務める。 羅睺星が先頭に立って検閲し、計都星がその後ろに堂々と続く。 太陰星は気力みなぎり意気盛んで、太陽星は光り輝いて明かに照らす。 五行星はとりわけ豪傑ぞろいで、九曜星は最も戦いを好む。 元辰の星々は子・午・卯・酉の時に、それぞれが大力の天丁として並ぶ。 五瘟・五岳は東西に並び、六丁・六甲は左右に行進する。 四渎の龍神は上下に分かれ、二十八宿は幾重にも層をなして密集している。 角・亢・氐・房が先頭に立ち、奎・婁・胃・昴は翻ることを得意とする。 斗・牛・女・虚・危・室・壁、心・尾・箕の星もそれぞれ能あり。 井・鬼・柳・星・張・翼・軫の星々は、槍を振るい剣を舞わせて威を示す。 雲を止め霧を降らせて俗世に臨み、花果山の前に陣営を構えた。
詩にいわく:
天が産みし猴王は変化おびただしく、丹を盗み酒を盗んで山の巣に楽しむ。 蟠桃の会を乱したがためにこそ、十万の天兵が網を張り巡らすこととなった。
当時、李天王が令を伝えると、衆の天兵は陣を構え、まず九曜の悪星を戦いに出させた。九曜はすぐさま兵を率いて洞の外まで直進した。見れば洞の外では大小の群猿が跳ね回って遊んでいた。星官が声を張り上げて呼ばわった。「小妖どもよ、お前たちの大聖はどこにいる。われらは上界よりお遣わしになった天神で、謀反を起こした大聖を降伏させに来た。早々に帰順するよう申し伝えよ。半分でも否やと言おうものなら、お前たちをひとり残らず成敗するぞ。」小妖たちはあわてて中へ伝えた。「大聖さま、大変です!大変です!外に九人の凶神が現れ、上界からお遣わしになった天神だと言って、大聖を降伏させると申しています。」
大聖はちょうど七十二洞の妖王たちと四健将とともに仙酒を分けて飲んでいたところで、この報を聞いても平然として言った。「今朝酒があれば今朝飲め、門前の是非は知ったことではない。」言い終わらないうちに、また一群の小妖が飛んで来て告げた。「あの九人の凶神が悪口雑言を並べ立てて、門前で戦いを挑んでいます。」大聖は笑って言った。「構うな。詩と酒で今日の楽しみを図れ、功名など何時なるかを問うでない。」まだ言い終わらないうちに、また一群の小妖が駆け込んで来て報告した。「旦那さま!あの九人の凶神がすでに門を打ち破って攻め込んで来ました。」大聖は怒って言った。「この毛くさい神めが、何たる無礼ぞ。相手にするつもりはなかったが、こちらへ押し込んでくるとは。」すぐに独角鬼王に命じた。「七十二洞の妖王を率いて出陣せよ。老孫は四健将を率いてその後に続く。」鬼王はすぐに妖兵を率いて門を出て迎え撃ったが、九曜の悪星たちに一斉に攻めかかられ、鉄板橋の畔で立ち往生して前へ出られなくなった。
喧騒のなか大聖が到着して、「道を開けろ!」と一声叫び、金箍棒を繰り出した。ひと振りすると椀ほどの太さ、一丈二尺の長さになり、構えを取って打ち出した。九曜の星たちは誰一人立ち向かえず、たちまち打ち退けられた。九曜星が陣形を立て直して言った。「この命知らずの弼馬温め、お前は十の大罪を犯した。まず桃を盗み、次に酒を盗んで蟠桃の大会を荒らし、さらに老君の仙丹を盗み、挙句に御酒まで盗んでここで楽しんでいたとは。罪の上に罪を重ねながら、それが分からぬか。」大聖は笑って言った。「そのことは確かにあった、確かにあった。それでお前たちはどうするつもりじゃ?」九曜星は言った。「われらは玉帝の金の御旨を奉じて衆を率いてここに来た。早々に帰順せよ。さもなくば、この生き物たちの命を奪うのみならず、この山を踏み平らげ、この洞を掘り返すぞ。」
大聖は大いに怒って言った。「お前たち程度の毛神どもに、何の法力があろうか。大言壮語もほどほどにせよ。逃げるな、老孫の一棒を食らうがよい。」九曜星は一斉に踊りかかった。美猴王は少しも恐れず、金箍棒を振り回して左にかわし右に防いだ。九曜星は力尽きて疲れ果て、一人一人が武器を引きずりながら敗走し、急いで中軍の幕営へ戻って托塔天王に告げた。「あの猴王はまことに剛勇で、わたくしどもでは歯が立たず、敗れて戻って参りました。」李天王はすぐに四大天王と二十八宿を動員して一隊を出陣させた。大聖もまったく恐れず、独角鬼王・七十二洞の妖王と四人の健将を繰り出し、洞の門前に陣を敷いた。
この乱戦の凄まじさといえば:
冷たい風がざわざわと吹き、怪しい霧がどんよりと立ちこめる。 あちらには旌旗が彩をなびかせ、こちらには戈と戟が輝きを放つ。 滾々と兜は日に映えて、銀の磬が天を打つようだ。 層々と甲冑は岩崖を積むようで、大地を圧する氷山のごとし。 大杆刀は飛雲を揺り動かして電光を閃かせ、楮白枪は霧を渡り雲を貫く。 方天戟・虎眼の鞭は麻林のように列を成し、青銅の剣・四明の鑿は密林のように陣を並べる。 弓と強弩から放たれる鵰翎の矢、短棍と蛇矛が魂を奪う。 大聖の一本の如意棒は、行き来しながら天神どもと戦い続ける。 戦いに空を鳥は翔べず、山中では虎と狼が逃げ惑う。 砂を揚げ石を飛ばして乾坤は黒く、土が舞い塵が飛んで宇宙は霞む。 ただ聞こえるのは兵乱れる轟音が天地を揺さぶり、猛烈な気迫が鬼神を震わす声だけ。
この戦いは辰の刻に始まり、日が西山に沈むまで乱戦となった。独角鬼王と七十二洞の妖怪たちはことごとく衆の天神に捕えられてしまった。四健将と群猿だけがかろうじて逃げのびて、水簾洞の奥深くに身を潜めた。
大聖は一本の棒で四大天神と李托塔・哪吒太子を引き受け、皆で空中にあって長く戦い続けたが、日暮れが近づいたのを見て、毫毛を一握り引き抜いて口の中で噛み砕き、吹き出して叫んだ。「変われ!」すると千百もの大聖に変じ、それぞれが金箍棒を使って哪吒太子を打ち退け、五人の天王を打ち負かした。
大聖は勝ちを収め、毫毛を回収してから、身を翻して洞へと急いで戻ると、鉄板橋の畔で四人の健将が衆を率いて出迎えているのが見えた。その衆は、声を上げて三声泣き、やがて声を上げて三声笑った。大聖は言った。「お前たちはわしを見て、泣いたかと思えば笑う。どういうわけじゃ。」四健将は言った。「今朝、衆将を率いて天王と戦いましたが、七十二洞の妖王と独角鬼王はことごとく衆神に捕えられました。わたくしどもは命からがら逃げのびましたので、そのために泣いたのです。大聖さまが勝って御無事でお戻りになられたのを拝見して、そのために笑ったのです。」
大聖は言った。「勝ち負けは兵家の常じゃ。古人も申しておる。『人を万人殺せば、おのれも三千を損なう』と。まして捕えられた者たちは虎・豹・狼・虫・獾・鹿・狐・ムジナの類いで、わしと同じ種の者は一人も傷ついておらぬ。何を思い煩うことがあろうか。奴らはわしの分身の法で打ち退けられたとはいえ、まだわしの山の麓に陣を張っておる。われらはしっかりと守りを固め、腹いっぱい食べて安心して眠り、気力を蓄えておこう。夜が明けたら見ておれ、老孫が大神通を使ってあの天将どもを捕えて、衆の仇を晴らしてやる。」四将と衆の猿は椰子の酒を幾杯か飲んで、安心して眠りについた。ここではこれ以上語るまい。
一方、四大天王は兵を収めて戦いを終えると、それぞれが功績を報告した。虎や豹を捕えた者あり、獅子や象を捕えた者あり、狼や虫や狐やムジナを捕えた者ありと、猿の精は一匹も捕えられていなかった。そのとき、また宿営の陣に帰り、大きく陣を敷いて功のあった将に賞を与え、天羅地網の兵たちに言い渡して、それぞれの場所で鈴を鳴らし号令をかけて花果山を取り囲み、翌朝の大戦に備えた。各人は命を受けてそれぞれの持ち場をしかと守った。これまさに:
妖猿が乱を起こして天地を揺るがし、網を張り羅を広げて昼夜見張りが続く。
夜が明けた後どう処置されるか、次回をご期待あれ。