西遊記百科
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第44回 法身、元運もて車力に逢う——心正しければ妖邪、脊関を渡る

黒水河を越えた師弟四人が車遅国に着く。三人の道士(虎力大仙・鹿力大仙・羊力大仙)が国王に重用され、仏教が弾圧されて五百人の僧が奴隷として使われている。悟空は道士に化けて事情を探り、五百人の僧に護身の毛を与えて解放する。夜中に三人で三清観に忍び込み、供え物を食い、尿を聖水として道士に飲ませる。

孫悟空 猪八戒 三蔵法師 沙悟浄 車遅国 虎力大仙 鹿力大仙 羊力大仙 三清観 智渊寺

経を求めて障りを脱し西へと遊び、数え切れぬ名山が尽きることなく続く。 兎走り烏飛んで昼夜を催し、鳥の啼き花の落つるに自ずと春秋がある。 微塵の目底に三千の界、錫杖の頭辺に四百の州。 水に宿り風に食んで紫の道を登るが、いつの日に帰れるとも知れない。

師弟四人が黒水河を渡って西へ歩き続けるうち、早春の季節が訪れた。梅の残雪、麦の穂、氷解けて山の泉が流れ、万象の春が道沿いに広がっていた。

そのとき遠くから轟音がした。三蔵が怯えて馬を止めると、悟空は「待ってください」と空へ飛んで見下ろした。遠くに城があり、城門外の砂浜に大勢の僧侶が集まって車を引いている。砂浜の坂は急で、積まれた荷は煉瓦や木材だ。見ると城門から若い道士が二人出てきた——星冠をかぶり錦繍の衣を纏った若者たちだった。

僧侶たちは道士を見るや怯えて懸命に車を引いた。悟空は「あの道士を怖がっている。西方に仏教を弾圧する国があると聞いたことがある。まず事情を探ってこよう」と思い、雲から降りて遊方道士の姿に変化した。渔鼓を叩きながら道情の詞を唱い、二人の若い道士に近づいた。

「道長、こちらは何という国ですか」と問うと、道士は「車遅国だ」と答えた。

「この国の国王は二十年前の旱魃のとき、私の師匠たちが雨を降らせて以来、道門を深く重んじておられる。師匠のお名前は虎力大仙・鹿力大仙・羊力大仙といい、朝廷と兄弟の縁を結んでいる」と道士は誇らしげに言った。

「では僧侶たちがこんな苦役をしているのは」と悟空が問うと、「当年の旱魃で僧侶たちは念仏をするだけで雨を降らせられなかった。師匠方が来て雨を降らせると、朝廷は僧侶たちを役立たずと見て、寺を壊し度牒を取り上げ、師匠方の家の奴婢にした」と道士は平然と言った。

悟空が「あの僧侶たちを全員放してくれたら一緒に城に入ろう」と言うと、道士たちは「そんな御旨もないのに無理だ」と断った。怒った悟空は棒で道士の頭を打ち砕いた。

砂浜の五百人の僧たちが駆け寄ってきた。「神様、不吉なことを——国師の弟子を打ち殺して大変なことに」と慌てる僧たちに、悟空は「俺は大唐聖僧の弟子・孫悟空行者だ。お前たちを救いに来た」と言った。

「太白金星が夢の中でいつも孫行者の様子を教えてくれた——齊天大聖が来るまで苦しんで待てと」と僧たちが言い、悟空に向かって拝した。悟空が護身の毛を一握り抜いて細かく噛み、五百人それぞれに一切れずつ渡して「薬指の爪の間に挟み、拳を固めて歩け。捕まえようとする者があれば拳を握り締めて『齊天大聖』と叫べ、俺が来る」と言うと、僧たちは東西南北へ散っていった。


師弟一行は城内の智渊寺という古い寺に泊まった。この寺だけは先王太祖の神像があるため取り壊されなかった。寺の老和尚は「太白金星が毎晩夢に来て孫大聖の来訪を告げていた。もう少し遅ければ皆死んでいた」と泣いて感謝した。

夜の二更、悟空は眠れずに空へ出ると、南に灯火が輝いていた。降りてみると三清観で道士たちが一晩中経を読んでいる。三清観には立派な供え物が並んでいた——斗のような大饅頭、五六十斤もある焼き菓子、山盛りの料理。

悟空は八戒と沙悟浄を起こして「あそこに食べ物がある。行こう」と言った。八戒は食い物と聞いた途端に飛び起きた。

三人が三清観の上空に潜むと、悟空が風の呪を使って一陣の嵐を起こした。灯火が一気に消え、道士たちは驚いて「神風が過ぎた、今夜は終いにして明日早起きして補おう」と引き下がった。

悟空・八戒・沙悟浄は三清殿に踏み込んだ。八戒は元始天尊の像を押し倒して「老爷爷、よく座ったな、今度は俺が座る」と変化して太上老君に成りすました。悟空が元始天尊に、沙悟浄が灵宝道君に化けた。三人は押しのけた聖像を厠に捨ててから供え物にかぶりついた。

大饅頭、焼き菓子、点心、油揚げ——何でも構わず食べた。悟空は果物だけ食べて二人に付き合った。

食べ終わって雑談しながら休んでいると、廊下から小道士が手鈴を取りに来た。息遣いを聞いて怯えた小道士は転んで鈴を砕いた。八戒が思わず「ハハハ」と笑い声を上げた。

小道士は肝を潰して師匠のもとへ飛んで行き「大変です、殿の中に笑い声が」と報告した。虎力大仙たちは「天尊様が降臨されたのかもしれない」と歓喜して入ってきた。

道士たちは供え物が全部食われているのを見て「天尊が召し上がった」と信じ込み、虎力大仙が跪いて「聖水と金丹を陛下に献上したい、どうかお授けください」と拝んだ。

八戒が「どうしよう、どう答える」と囁くと、悟空は「任せろ」と言い、「蟠桃の宴から来た。今日は金丹は持ってこなかった。また今度来る」と答えた。道士たちは「せめて聖水だけでも」と懇願し続けた。

悟空は「では容器を持ってこい。中を見てはならぬ」と言い、道士たちを外に追い出してから虎皮の裙をまくり上げ、花瓶に小便をした。八戒はもっと勢いよく砂盆いっぱいに溜めた。沙悟浄は大甕の半分を埋めた。

「小仙よ、聖水をお受けとれ」と悟空が呼ぶと、道士たちが入ってきて有り難く運び出した。

虎力大仙が一杯汲んで飲むと「なんとも酸っぱい風味がある」と言い、羊力大仙が試すと「豚の小便の臭いがする」と言った。さすがに悟空は笑いを堪えきれず、「道号よ道号よ、よく聞け。その聖水とは俺たちの小便だ。大唐の僧が奉旨西来、夜の宮廷に降りて供え物を食い、礼拝された答えが我が一尿なりと知れ」と叫んだ。

道士たちは怒って叉や扫把を振り回した。悟空は八戒と沙悟浄を脇に抱えて飛び出し、智渊寺の方丈に戻って何事もなかったように横になった。