第四十一回 心猿、火に焼かれ敗れ——木母、魔に囚わる
紅孩児が三蔵法師を連れ去った火雲洞に悟空と八戒が乗り込むが、三昧真火の猛威に抗えず、八戒は偽の観音に化けた紅孩児に欺かれて捕らわれる。
沙悟浄とともに沢のそばで待つよう言い残し、悟空と八戒は枯松涧を飛び越えて怪石の崖へ向かった。「号山枯松涧火雲洞」と刻まれた石碣があり、洞の前では小妖たちが槍や剣を手に遊んでいた。
悟空は大声で呼ばわった。「小妖どもよ、早く洞主に知らせろ。唐僧師父を返せ、さもなくば山ごと叩き潰してやる」
小妖たちは転がるように洞の中へ引き返し、洞の扉を閉めた。妖王のもとへ「大変です、孫行者と猪八戒が門前に来ました」と報告すると、妖王は「よく探し当てたものだ」と微かに笑い、五輌の小車を押し出させて金・木・水・火・土の五行に配置させた。それから丈八の火尖槍を持って洞の外へ出た。
その姿を見ると——
顔は粉を塗ったように三分の白、 唇は朱を引いたように艶やか。 鬢は靛より青い雲を纏い、 眉は三日月の刃のごとく分かれる。 龍鳳の刺繍の裙を腰に巻いて裸足で立ち、 形は哪吒よりさらに勇壮な胎格。
「何者が俺の洞の前で騒いでいる!」と妖王が叫ぶと、悟空は「賢い甥よ、俺はお前の父の七人兄弟の末弟だ。今日は叔父として、師匠を返してくれと頼みに来た」と笑って近づいた。
妖王は「誰がお前の甥だ!」と憤って火尖槍を突き出した。悟空は身をかわして鉄棒で応じ、二人は雲の上へ飛び上がって戦いを繰り広げた。二十合を経ても勝敗がつかず、八戒が加勢しようと鉄鈀を振り上げて飛び込んだ。妖王はそれを見て後退した——
と思ったら突然、五輌の車から赤い炎が溢れ出した。妖王は拳で自分の鼻を二打ちして咒語を念じると、口から火を噴き、鼻からは濃い煙が立ち上り、目もくらむほどの業火が空を赤く染めた。
熛々たる烈火が空を焦がし、 赫々たる炎が大地を赤くする。 これは火打ち石の火でもなく、老君の丹炉の火でもない—— 妖魔が長年修炼して成した三昧真火。 五輌の車は五行に応じ、五行相生して火を精錬する。 肝木は心火を生み、心火は脾土を平らげ、 脾土は金を生み、金は水に化け、水は木に返る。 生々化々すべて火にあり、 西方第一の名に永く鎮まる。
八戒はたちまち「焼かれて食われるくらいなら先に逃げる!」と叫んで涧を飛び越えて逃げた。悟空は避火訣を用いて火の中に飛び込んだが、三昧火は通常の火とは比べものにならず、煙に巻かれて洞口の道すら見えなくなった。やむなく悟空も飛び出した。
悟空は涧を越えて八戒と沙悟浄のもとへ戻り、状況を話した。沙悟浄は「水で火を克せばよい」と言い、悟空は「なるほど、龍王に水を借りよう」と東洋大海へ飛んだ。
敖広(東海龍王)は弟たちを召集した。四海の龍王が揃い、龍兵・海老・蟹・鯉などの水軍を引き連れて号山に雨を降らせた。四方から水が押し寄せて滝のように洞口を叩いたが——三昧火は雨の中でも消えなかった。
龍王の水が三昧火に当たると白い煙を上げるばかりで、かえって悟空の目と顔に煙が突き刺さった。悟空は涙を流しながら龍王を礼して帰らせ、涧のそばに倒れ込んだ。
「師兄!」と沙悟浄が駆け寄ると、悟空の顔は煤煙で真っ黒になり、目が赤く腫れていた。「あの火は水で消えない。観音菩薩しかいない」と悟空が言い、「八戒、お前が行け。菩薩のもとへ助けを乞いに行くのだ」と命じた。
八戒はぶつぶつ言いながらも出発した。しかし南海への道の途中、白蓮花の台座に乗った観音菩薩に出会った——と思った。八戒は喜んで膝まずき「菩薩!まさにお会いしたかった!師匠が紅孩児に攫われ……」と説明しようとした途端、観音の姿が消えて皮袋が落ちてきた。
八戒は気づいたときには皮袋の中に入れられていた——紅孩児が観音に化けて八戒を捕まえたのだった。袋の中で「悟空めに担がれて来た方がましだった……」と呟きながら、八戒は宙ぶらりんに吊るされた。