第39回 一粒の丹砂、天上に得る——三年の故主、世間に生まれる
悟空は兜率院の太上老君を訪ね、九転還魂丹を一粒手に入れる。宝林寺に戻って先王の唇に丹を入れ、清気の一息を吹き込んで蘇生させる。先王は師弟一行を感謝して城へ連れていく。太子と皇后が協力して偽国王との対決を準備する。
悟空が兜率宮の門をくぐると、太上老君は丹房で童子たちに芭蕉扇を持たせて火を扇いで丹を精錬していた。老君は悟空が来るのを見て「宝物を盗みに来たか、みなよく見張れ」と注意した。
悟空は「師匠に礼を」と笑って言った。「今は悪さをする気はありません。ただ一粒の九転還魂丹をお借りしたくて参りました」
老君は「五百年前に丹炉を荒らしたことも忘れていないぞ。おまけに平頂山での件では宝物を返さず随分と面倒をかけさせた」と言うと、悟空は「あれはちゃんと菩薩にお返ししました。今日のことは別の話です。乌鸡国の国王が全真道士の妖怪に殺されて三年になります。師匠が深く哀れみ、どうか陽の世界で救ってやれと申します。九転還魂丹を百粒ほどいただければ」と言った。
「百粒?米粒のように作れると思うか。ない、ない、帰れ」と老君が言い、「十粒では」「ない」「一粒では」「ない!」と押し問答を続けた。悟空は「ではよそへ頼みに行く」と立ち上がった。
老君が見送ろうとして「待て。その猿は今すぐ戻って盗み始めるに決まっている」と思い直し、「お前に一粒やる。それで国王を救え」と言った。悟空は受け取った丹砂を口の中で転がすと、老君が「飲んだら殺すぞ」と頭を掴んで怒鳴った。悟空は「口の中にあるのが見えるか?ここにあるではないか」と見せた——実は喉の下の嗉袋に隠していた。老君に「早く行け、また来るな」と叱られ、悟空は礼を言って兜率宮を後にした。
夜明け頃に宝林寺に戻ると、八戒はまだ泣いていた。悟空が「師匠、丹を手に入れました」と言うと、沙悟浄が井戸から水を半鉢汲んできた。悟空は口から丹砂を取り出して遺体の唇の間に入れ、水で流し込んだ。
半時ほどすると腹の中から「ゴロゴロ」と音がしたが、身体は動かなかった。三蔵は「金丹が入ったので腸が動いた。血脈が和らぐ証拠です。しかし三年も井戸に浸かっていて気が全部絶えてしまっている。誰かが一息の気を吹き込んであげれば生き返ります」と言った。
八戒が「俺が吹き込む」と近づくと師匠が「いけません」と止めた。八戒は幼い頃から人を食って罪を積み、一口の濁気しか持っていない。悟空は幼い頃から松柏を噛んで桃果を食べ、清らかな気を蓄えている。
悟空が前へ出て、雷公嘴(尖った口)を国王の唇に当て、呼吸一息を吹き込んだ。気が咽喉を下り重楼を過ぎ丹田へ至り、涌泉穴から泥丸宮へと循環した。
国王が「呼!」と大きく息をついて身体を翻し、拳を振り上げ足を曲げ、目を開いて叫んだ。「師父!」と両膝をついて礼をした。「昨夜の鬼魂の参拝を覚えていたが、今朝こうして陽に戻れました」
三蔵が「お礼は私にではなく弟子に言いなさい」と言うと、悟空は「師匠のものです。一家に二人の主はいない。受け取ってください」と笑った。
寺の僧侶たちが早朝の粥を持ってきて、水衣姿の見知らぬ人物を見て驚いた。悟空が「これは乌鸡国の真の国王だ。三年前に妖怪に殺されたが、老孫が今夜救い出した。今から城へ入って邪正を正す」と説明した。
国王の濡れた着物を乾いた布直裰に着替えさせ、蓝田帯の代わりに黄丝绦で腰を縛り、僧鞋を履かせた。八戒は担ぎ荷を二分して軽い方を自分、重い方を国王に担がせた。悟空が「陛下、担ぎを四十里担いで城に着いたら妖怪を捕まえる。それが済めばまた国王に戻れます」と言うと、国王は「師父のためなら鞭を持って馬の前を走っても構いません」と言った。
一行は宝林寺を後にして乌鸡国へ向かって歩いた。
西方に向かう道筋、金と木が合して神を練る。 丹の母は夢の中に漂い、嬰児は常に真身を恨む。 必ず井底に明主を求め、なお天堂に老君を拝す。 色空を悟りて本性に帰れば、仏は誠に有縁の人を度す。