第三十四回 魔王、巧みに計りて心猿を困らす——大聖、変幻をもって宝物を騙し取る
悟空は蓮花洞に潜入して宝物を奪おうとするが、幌金縄に縛られて捕らわれ、その後、偽身を使い分けながら金角大王から葫蘆を奪い取るが、銀角大王の呼びかけに不覚を取り、葫蘆に吸い込まれてしまう。
洞口に戻った悟空は「精怪よ、宝物を返せ!師匠と弟弟子たちも返せ!」と大声で呼ばわった。銀角大王が宝剣を手にして飛び出してきた。二人は空中で三十合を超えて激しく戦い、優劣がつかなかった。
悟空は幌金縄を持っていたので試してみることにした。縄を投げると銀角大王に当たりがしゃりと巻きついた——しかし銀角はこれが自分の宝物だと知っており、松縄咒を念じて縄を緩めて脱出し、逆に悟空に投げつけた。縄は悟空の首下に巻きつき、銀角が紧縄咒を唱えると悟空は身動きが取れなくなった。
銀角は悟空を洞の中に引きずり込み、金角に「孫行者を捕まえました」と報告した。金角は悟空を柱に縛り付けて酒を飲んだ。
梁に吊られた八戒は「師兄、宝物が取れなかったんですね」と声をかけた。悟空は「いや、すぐ抜け出してお前たちを救う」と言った。悟空は口で八戒と話しながら、目では小妖たちの動きをじっと観察した。妖怪が奥で酒に夢中になって守りが薄くなった隙に、悟空は如意棒を錫に変化させて首の金輪を三五回で切り落とし、縄から抜け出した。毛一本を残して「変われ」と吹き、偽の縛られた姿を作り、自身は小妖に変化して柱の傍に立った。
八戒が「縛ってあるのは偽物だ!」と梁の上から叫ぶと、金角が「八戒は何を喚いているのだ」と問うた。悟空(小妖の姿)は「猪八戒が孫行者に変化して逃げろと言ったのですが、行者は逃げないでいます」と答えた。「ならば八戒に嘴棍を二十発くれてやれ」と命じられ、悟空が棒で打つと八戒は「軽くやれ。俺はお前だと分かっているんだ」と囁いた。「師兄が変化したから黙っていろ」と悟空が返すと、「尻尾が赤いじゃないか、それで分かった」と八戒。悟空はこっそり台所で鍋の底をこすって尻を黒く塗り、戻ってきた。「今度は尻が黒くなって帰ってきた」と八戒は笑った。
悟空(小妖の姿のまま)は金角の前へ進み出て「大王、縛ってある孫行者が縄をこすって傷めています。太い縄に換えた方がよいのでは」と言った。金角は「言われてみれば」と腰の獅蛮帯を外して渡した。悟空は偽の行者を獅蛮帯で縛り直し、幌金縄を袖に収め、毛から作った偽の幌金縄を「これで直しました」と金角に返した。
金角は酒に夢中でろくに確認もせずに受け取った。
悟空は急いで洞を抜け出して本来の姿に戻り、「妖怪!」と叫んだ。小妖が報告すると金角は「孫行者を縛ってあるのに、また孫行者が来たのか?」と驚いた。銀角は「葫芦がある。こちらに来い、一声呼んで装填してやる」と宝物を持って外に出た。
銀角は空中から「行者孫!」と呼んだが、悟空は名前を変えて「者行孫」と名乗っていたので「名前が違う。それでは応じない」と言い張った。「ならば者行孫、お前を呼ぼう」と銀角が叫ぶと、悟空は「本名で呼ばれても入り、偽名で呼ばれても入らない——ならば安心だ」と思い、つい「あいよ」と応じてしまった。
その瞬間、吸われた。
葫芦の中は真っ暗だった。悟空は「上を押しても動かない。五百年前、老君の炉で四十九日鍛えられて金の心肝・銅の頭・鉄の背を持つ俺が、一時三刻で膿になるものか。どうなるか見てやろう」と腹を決めた。
銀角が洞に持ち込んで「もうすぐ音がする」と待った。悟空は聞こえた。「音がしたら帖を剥がして開けるな……よし」と唾液を溜めて一気にうがいの音を立てた。「腰の骨まで溶けた!」と叫ぶと金角が「腰まで溶けたなら全部だ、帖を剥がせ」と言った。
悟空は毛を一本抜いて「半身の骸骨」に変化させ葫芦の底に置いた。自身は蟭蟟虫になって口の縁に張り付いた。銀角が帖を剥がした瞬間、悟空は飛び出した。
倚海龍に変化して傍に立つと、金角が葫芦を覗いて「半身がまだある。まだ溶け切っていない、蓋をしろ」と銀角に命じた。悟空は「老孫はすでにここにおります」と内心で笑った。
酒宴が続く中、金角が銀角に「よくやった、一杯」と杯を差し出した。銀角は片手で葫芦を持ちながら両手で酒杯を受け取ろうとして、倚海龍(悟空)に葫芦を渡した。
悟空は葫芦を袖の中にしまい、毛から作った偽葫芦を手に持って「はい、大王」と差し出した。二人の魔頭は談笑しながら酒を飲み続け、葫芦の真偽を確かめる余裕もなかった。
妖頭いかに手段あれど、 葫芦はついに孫の姓となった。