第三十三章 外道が真性を惑わし、元神が本心を救う
悟空は二匹の小妖を巧みに欺いて宝物を奪い、銀角大王の猛攻を潜り抜けながら、ついにその本拠地へと迫る。
金角大王は八戒を見て「これは使い物にならない。後ろの水池に浸けておいて、毛を落として塩漬けにし、天気の悪い日の肴にしよう」と言った。八戒は「腌腊の妖怪に捕まったか……」と嘆きながら水に放り込まれた。
一方、師匠は八戒の帰りが遅いことを心配した。悟空は「妖怪がいれば八戒はすぐ逃げて報告に来る。妖怪がいないから遠くまで行ったのでしょう」となだめた。
やがて銀角大王は唐僧の気配を感じた。善人の頭上には祥雲が漂い、悪人の頭上には黒気が立つ。人間には見えないが妖怪の目には「あそこにいる」と分かった。
銀角は老道士に変化して道端に倒れ、怪我をした素振りをした。三蔵が「助けてあげなければ」と言い、悟空が乗せることになった。しかし悟空は「こいつは妖怪だ」と見抜きながらも、師匠が「不吉なことを言うな、乗せてあげろ」と言うので背負った。
三四里歩いたとき悟空は「ついでに投げ落として殺してしまおうか」と思ったが、その途端に妖怪が咒語を念じ、須弥山を空中から悟空の左肩に降らせた。悟空は「軽いもの」と頭を傾けて受け止めたが、続いて峨嵋山が右肩に、さらに泰山が頭上にと、三座の山が次々と降ってきた。さすがの悟空も三尸の神が震え七窍から血が滲んだ。
妖怪は師匠と沙悟浄を奪って洞へ連れ帰り、三人の和尚を梁に吊るした。
山根に押しつぶされていた悟空は「師匠よ、可哀想に……」と涙を落とした。すると山神・土地・五方揭諦神が会合を開いた。揭諦が「あれは孫大聖ではないか。なぜ妖怪のために山を貸したのだ」と土地を叱ると、土地は「咒語で召喚されたから従うしかなかった」と弁解した。
揭諦が「律には『知らざる者に罪なし』とある。今すぐ解放して大聖の怒りを買わないようにせよ」と言うと、衆神は外に出て「大聖よ、山を退かせます、罪を許してください」と申し出た。悟空は「退かすのなら打たない」と言い、「失せろ」と一声叫ぶと山が元の場所に戻った。
悟空が跳び起きて言った。「おい土地、打たないとは言ったが、念のために二発」「それは言ったことと違う!」悟空は笑って「あの妖怪は天上から来た精霊に違いない。好む者は全真道士だと言ったな。よし、老真人に変化して小妖どもを騙してやろう」
やがて山道に精細鬼と伶俐虫という二匹の小妖が現れた。葫芦と玉浄瓶を手に持ち「孫行者を装填するために行くところだ。底を天に向け口を地に向けて名を呼べば吸い込まれ、帖を貼れば一時三刻で膿に化ける」と話し合っていた。
悟空は老真人に変化して道端に立ち、わざと杖で引っかかるようにした。小妖が「邪魔だ」と叫ぶと、悟空は「道士が道士に会えばみな同じ家の者だ。どこへ行く」と訊いた。
小妖が「孫行者を捕まえに行く」と言うと、悟空は「俺もあの猿には恨みがある。一緒に行こう」と言った。さらに「この葫芦はどういう宝物か」と問うと、小妖は自慢げに「人を一千人装填できる」と説明した。悟空は「俺の葫芦は天を装填できる」と言い、宝物を見せ合うことになった。
悟空は毛を一本抜いて「変われ」と吹き、一尺七寸の紫金紅葫芦に変化させた。「俺のは天を装填できる」というと、小妖は「じゃあ見せてみろ」と言った。悟空は日游神・夜游神に頼み玉帝に奏上して天を借りた。哪吒太子が皂雕旗を展開すると日月星辰が覆われ、昼間が暗闇になった。小妖は驚いて「本当に天が入っている!換えてくれ!」と言い、二件の宝物と悟空の偽葫芦を交換した。
宝物を手にした悟空は次に幌金縄を狙った。銀角大王が圧龍山の老母に使いを遣ったと分かると、先に使いの小妖(巴山虎・倚海龍)を倒して自分が倚海龍に変化した。
老奶奶の洞に着いて「蓮花洞から参りました。二位の大王が唐僧肉を食べにいらっしゃいと。幌金縄もお持ちください」と言うと、老奶奶は喜んで輿に乗って出発した。
道の途中、悟空は輿持ちに焼き餅(毛から変化)を分けてやり、輿持ちが気を緩めたところで棒で打ち倒した。振り向いた老奶奶を輿の前で一撃すると、倒れたのは九尾狐狸だった。幌金縄を奪った悟空は「よし、これで三件。あの妖怪に手段があっても、三件の宝物は孫姓になった」と笑った。
悟空は老奶奶に変化して輿に乗り、蓮花洞へと向かった。洞の中では二人の魔頭が出迎えの香案を並べ、「母上」と膝まずいた。悟空は「よし、俺が先に小妖として一度頭を下げ、今度は老奶奶として二度頭を下げさせてもらう」と内心で笑いながら、「我が子よ、立ちなさい」と答えた。
梁に吊るされた八戒は高い位置から猿の尻尾が垂れているのを見てこっそり沙悟浄に告げた。「あれは弼馬温だ。変化しても尻尾を変え忘れている」
ところが八戒が「耳が食べたいと言ったが俺の耳を切るつもりか」と叫んだため、見張りの小妖が外から駆け込んできて「奶奶を倒して化けて入った者がいる!」と報告した。銀角大王が宝剣を振り上げると、悟空は身を揺すって洞の中に赤い光を充満させ、そのまま抜け出した。
洞の外で悟空は本来の姿に戻り、大声で「精怪よ!」と叫んだ。銀角大王が宝刀を持って出てくると、悟空は葫芦を構えて「銀角大王!」と一声叫んだ。銀角は思わず応答した瞬間、葫芦の中に吸い込まれ、悟空は急いで帖を貼った。
洞口に戻る道すがら、悟空は葫芦を揺らすとカラカラと音がした。「発課の筒みたいに響く」と笑いながら、師匠たちを救うために歩みを速めた。