第二十七回 屍魔、三度三蔵法師を弄ぶ——聖僧、美猴王を恨み追放す
白骨夫人という妖精が三度の化身で三蔵を欺こうとするが、悟空にすべて見破られ、ついには三蔵の誤解によって花果山へと追い返される。
鎮元大仙のもとで数日逗留し、三蔵は人参果を食べてから体が軽くなったと感じた。取経の志に急いた師匠に促されて師弟四衆は五庄観を後にし、白虎嶺という山へと踏み込んだ。
峰岩が幾重にも重なり、渓谷が蜿蜒と曲がりくねる。 虎と狼が群れをなして歩き、獐と鹿が連れ立って行く。 千尺の大蟒が愁霧を噴き、万丈の長蛇が怪風を吐く。
山の半ばで三蔵が「悟空、腹が空いた。托鉢に行ってきてくれ」と頼むと、悟空は「師匠、この荒れた山の中では托鉢する人家もない。南の山に赤い点が見える、熟した山桃があるかもしれない。取ってきます」と鉢を手に飛び去った。
実はこの山には白骨夫人という妖精がいた。何年もかけて得道の境地に近づいた潜霊の屍鬼で、金蟬子の転生である三蔵の肉を一口食べれば不老不死になれると聞いて機会を狙っていた。しかし三蔵の傍らには八戒と沙悟浄が控えており近づけない。「一度だまかして様子を見よう」と思い、山の窪みで身を変えた。
若い女が左手に青い砂の壺、右手に緑の磁瓶を提げて西から東へ歩いてきた——月のような容貌、花のような顔、柳の眉と杏の目。八戒がよだれを垂らしながら「どちらへ?その壺は何ですか」と問いかけると「香米の飯と炒め麩、取経の御僧に供えたくて」と娇声で答えた。
三蔵は少し訝しみながらも女の言葉を信じかけた。そこへ悟空が桃を担いで雲から舞い降りた。火眼金睛で一目見ると妖精と分かった——迷わず鉄棒を振り上げた。妖精は「解屍法」を使って抜け出し、偽の屍体だけを地に残して逃げた。砂の壺の中には米飯ではなく蛆の這う腐肉が、磁瓶の中には蛙と蟾蜍が詰まっていた。
三蔵は少し信じかけたが、八戒が「師兄の棒は重い、女が怖くなって術を使って逃げただけですよ、あれは農家の娘だった」と囁いた。三蔵は心揺れて呪を念じ始めた。悟空の頭に激痛が走った。
妖精は空中で「もう一度試してやろう」と思い直し、山の坂の下で八十歳の老婆に変じた——白い髪に杖をつき、一歩一歩泣きながら歩いてくる。「娘を探しに来た」という素振りを見て八戒が「師匠、師兄が打った娘の母親が来た!」と騒いだ。
悟空は近づいてすぐに見破り、棒を振り下ろした。妖精はまた元神を抜いて地に偽屍を残した。三蔵は「また打った!」と震え上がり、今度は呪を二十回も唱えた。悟空は地に転がって「もう念じないでください!」と叫んだ。三蔵が止めると「老婆の体を見てください」と言うと見れば地に偽の老婆の屍が横たわっていた。
三蔵がやや信じかけたが、八戒が再び「師兄が術を使って師匠の目を欺いているだけです」と吹き込んだ。三蔵は再び呪を念じた。
妖精は「この和尚は信じ込みやすい。もう一度」と今度は老公に変じた——白髪に白い顎鬚、数珠を手に念仏を唱えながら歩いてくる。悟空が「この親父も妖精だ」と見破って、土地神・山神を呼び寄せて空中から証人になるよう命じ、棒を振り下ろした。地に叩きつけると、今度こそ妖精の霊光が断たれた。脊梁に「白骨夫人」と書かれた白骨の山だけが残った。
三蔵は震え上がり「悟空、この人は今死んだばかりなのになぜ骸骨になっているのか」と問うと「これが潜霊の僵屍の正体です」と悟空が答えた。しかし八戒がまた「師匠の呪を避けるために術を使って目を欺いているだけです」と囁いた。
三蔵は信じ込んで「猴頭め、今日一日で三人を打ち殺した。出家の身でこんなことをして、何の取経か。帰れ!」と激怒した。悟空が詫びを言っても「二度とお前は徒弟ではない!」と言い張り、沙悟浄に紙と筆を取り出させて破門状を書いた。
悟空は破門状を袖に収め、涙を浮かべながら三蔵に礼をした。本来の姿を三つに増やして四方から師匠を包むように拝し、沙悟浄に「師匠をよく守れ。妖精が捕まえたら『老孫の大弟子だ』と名乗れ、妖精も怖れる」と頼んだ。三蔵は「お前の名は言わぬ」と背を向けた。
悟空は涙をこらえて筋斗雲を踏んだ。東洋大海の波の音が聞こえた時、思わず足を止めて師匠の姿を思い出してまた涙を流した。しかし長く止まることができず、独りさびしく花果山水帘洞へと帰っていった。