西遊記百科
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第20回 黄風嶺にて唐僧、難に遭う——半山中にて八戒、先を争う

三師弟が黄風嶺に差し掛かったとき、不気味な旋風が吹き荒れ、虎先鋒の罠に落ちた三蔵法師は黄風洞へと連れ去られてしまう。悟空と八戒は金蟬脱殻の計を打ち破り虎先鋒を討つが、師匠は依然として洞窟の奥深くに囚われたままだった。

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高老庄を後にした師弟三人は西への道を順調に進んだ。ある夕暮れ時、一軒の農家が道のほとりに立っていた。年老いた農夫と妻が門のそばに腰を下ろして夕涼みをしている。三蔵が馬から降りて礼を述べると、老夫婦は喜んで招き入れ、一夜の宿を提供した。

老人は「お坊様方、これより西は黄風嶺といって、八百里の難所がございます。何年も前から黄風大王という妖魔が住みつき、旅人が通ることもめっきり減りました。どうかお気をつけて」と言い、夕食を振る舞った。

行者は「師匠、妖怪一匹や二匹、老孫にかかれば朝飯前です。ご心配なく」と笑った。八戒もにやりとして「その通りです。天宮を揺るがした大聖と、天河を治めた元帥が揃っているのに、何を恐れることがありましょう」

老夫婦は安堵したが、それでも翌朝、見えなくなるまで見送ってくれた。


三師弟が黄風嶺の麓に差し掛かると、山の気配が一変した。松も柏も曲がりくねり、岩壁には亀裂が走り、谷間から濃い霧が立ち込めていた。

天を衝く崖壁、切り立つ絶壁—— 松柏は老いて根が盤を纏い、藤蔓は古びて枝が絡みつく。 虎の咆哮は谷に響いて木を揺らし、鶴の鳴き声は雲を穿って天に届く。 嶺上に黄風が吹けば、砂礫が舞い上がって日を覆う。 路傍に白骨が積み上がり、無数の旅人が帰らぬ道をたどった。

三蔵が白馬の歩みを緩めて「悟空、なぜかこの山に入ると胸が重くなる。気のせいだろうか」と言うと、行者が「師匠、妖気が漂っています。老孫が先行して様子を探ってきます。しばらく道のほとりで待っていてください」と言い、筋斗雲で山の奥へ踊り出た。

八戒が手綱を持って馬の傍らに立ち、三蔵を道端の石の上に座らせた。しばらく静かだったが、突然どこからともなく旋風が巻き起こった。最初は細い砂の流れだったが、みるみる大きくなって空を黒く染め、一陣の大風が師弟を包んだ。

「八戒、これは只ならぬ風だ!」

三蔵が叫んだが次の瞬間、黄色い光が閃いて風の中から大きな影が飛び出した。三蔵は馬ごと浮き上がり、八戒が「師匠!」と叫ぶ間もなく、黄色い旋風とともに西の山奥へ消えてしまった。


八戒が地団駄を踏んでいると、行者が戻ってきた。「どうした、師匠はどこだ」

「今し方、黄色い旋風が来て師匠を連れ去ってしまいました」

行者は金の火眼を見開いて四方を睨んだ。西の峰の奥に妖気が渦巻いているのが見えた。「あそこだ。黄風洞というのがあるに違いない。いくぞ」

二人が山の斜面を駆け上がると、道のまん中に一頭の大虎が立ちはだかっていた。黄色い斑模様の大虎で、両眼が燃えるように赤く光っていた。

「こいつが先ほどの旋風の主か!」行者が棒を構えると、大虎も爪を立てて咆哮した。

「お前が師匠を攫ったか!さっさと返せ!」

「黄風大王の命で参った。お前たちこそ命が惜しければとっとと引き返せ!」

行者と虎が打ち合うと、八戒も鈀を振るって加わった。三人が斜面で乱戦になった。虎は大きな図体に似合わず素早く、棒と鈀の間を縫うようにかわし続けた。数十合の後、八戒が大きく鈀を振り下ろした瞬間、虎は突然その場に伏せ、体から脱け出るように姿が消えた。

棒が風を切り、鈀は虎の背をはたいた——しかし打った感触がない。見ると地面に虎の皮が広がっているだけで、虎の本体はどこにもいない。

金蟬脱殻!」行者が叫んだ。「皮だけ残して逃げた!」

皮の下には平たい石しかなかった。八戒が「師兄、どこへ逃げたのですか」と周囲を見回すと、行者がすでに空中から叫んだ。「下だ!谷の下!馬を連れて見張れ!」

行者が谷を一飛びすると、谷の下り坂を必死に走る虎の後ろ姿が見えた。虎は本来の姿——老いた虎の先鋒の妖怪だったが、八戒が下りの坂で待ち伏せしていたことに気づかず、鈀の一撃をまともに食らって谷間に転がり落ちた。

「これで一丁!」八戒が嬉しそうに叫ぶと、行者が降りてきて虎先鋒の死骸を確かめた。「よくやった、八戒。だが師匠はまだ黄風洞の中だ。この虎を引きずって洞の前へ行き、師匠を返すよう要求しよう」


二人が虎先鋒の死骸を担いで黄風洞の前へ到着すると、石門の上に「黄風洞」と大書されていた。行者は棒で石門を叩き割らんばかりに叩いた。

「黄風大王とやら、出てこい!俺の師匠を返せ!さもなくばこの洞ごと叩き潰すぞ!」

中から小妖たちが飛び出してきて、虎先鋒の姿を見て「大将が死んでいる!」と叫びながら洞の奥へ走って報告に戻った。

行者は棒を肩に担いで立ち、八戒は鈀を構えて並んだ。黄風洞の石門はしかし固く閉ざされたままで、中からは応答がなかった。妖気だけが洞の隙間からじわじわと漂い出している。

「師兄、中は静かすぎます」八戒が言うと、行者は「正面から叩いても埒があかぬ。明日の朝、改めて正面から攻める。今夜は師匠が無事かどうかを確かめる方法を考えよう」

夜の山は静寂に包まれ、月が黄風嶺の切り立った岩壁を青白く照らしていた。師匠を取り戻すための戦いは、まだ始まったばかりだった。