第10回 老龍王、拙計にて天条を犯す——魏丞相、書を遺して冥吏に托す
涇河龍王が天の定めを破り死を宣告される。魏徴は夢の中で龍を斬り、唐太宗は霊に苦しめられ、宰相の遺書が冥府への橋渡しとなる。
光蕊が職を尽くし、玄奘が修行に励む様はひとまず置くとして、話は長安城の外、涇河の岸辺へと移ろう。
その地に、二人の隠れた賢人が住まっていた。一人は漁翁、名を張梢といい、もう一人は樵、名を李定といった。二人は科挙に及第したわけでもないが、読み書きを解する山の人であった。
ある日、二人は長安城に入り、張梢は担ってきた薪を売り払い、李定は籠の鯉を商いした。用を済ませると、共に酒屋に立ち寄り、ほどよく酔いが回ったところで、それぞれ酒瓶を一本ずつ携えて涇河の岸に沿い、ゆるりと歩いて帰路についた。
張梢が言った。「李兄よ、思うに、名を争う者は名のために命を落とし、利を奪い合う者は利のために身を滅ぼす。爵位を授かった者は虎を抱いて眠るようなもの、恩寵を受けた者は袖の中に蛇を入れて歩くようなものだ。つまるところ、われらのように山は緑、水は清く、逍遥自在に過ごし、淡い暮らしに満足して縁のままに生きるのが、何より勝ると思わぬか」
李定が応えた。「張兄の言う通りだ。ただ、お前の水の美しさより、わしの山の青さの方が勝ると思うがな」
張梢は言い返した。「山の青さが水の美しさに及ぶものか。証に一首、《蝶恋花》を詠もうではないか」
煙波万里に扁舟は小さく、 静かに孤蓬に寄りかかれば、 西施の歌声が水面に漂う。 名利の念は洗い流され、 蓼の穂や蒹葭の草をのんびりと摘む。 砂洲の鷗が点々と舞い、 柳の岸、葦の湾で 妻子と笑い語らう。 一眠りすれば風波も静まり、 栄辱なく、煩いもなし。
李定は首を振って言った。「お前の水の美しさより、わしの山の青さが勝る。これも証に《蝶恋花》を一首」
雲の林に松花が満ちあふれ、 黙して聞けば鶯が鳴く、 巧みな舌は笛のように響く。 春の暖かさに紅は薄れ緑は深まり、 やがて夏至がたちまちやってくる。 また秋が来て容易に姿を変え、 黄菊の香りに興じるのも良い。 厳しい冬など指で弾くほどで、 逍遥たる四季、誰にも縛られはしない。
渔翁の張梢は言った。「それでもやはり水の美しさが勝る。良い物をいただける証に、《鹧鸪天》を一首」
仙郷の雲と水が暮らしを満たし、 橹を押し、舟を横にすれば、それが我が家。 生きた鱗を割いて緑の鼈を煮、 紫の蟹を蒸し上げ、紅の海老を炊く。 青い芦の筍、水草の芽、 菱の実、鶏頭草はなお誇らしく。 白蓮の藕、老いた蓮、芹の若葉、 慈姑、茭白、水鳥の花。
樵の李定は負けじと返した。「お前の水の美しさより、わしの山の青さが勝る。良い物をいただける証に、《鹧鸪天》を一首」
峻嶺は天に届くかと高くそびえ、 草の庵、茅の小屋がわしの家。 塩漬け燻製の鶏や鵝は蟹や鼈より上等で、 獐や兔や鹿は魚や海老より旨い。 香椿の葉、黄楝の芽、 竹の筍、山の茶はなお自慢できる。 紫の李、紅の桃、梅や杏が熟し、 甘い梨、酸っぱい棗、木犀の花。
こうして二人は山と水の優劣を詞に詠み競い、さらに詩句を連ねながら語り合い歩いた。やがて分かれ道に差し掛かり、互いに深々と礼をして別れを告げた。
張梢が笑いながら言った。「李兄よ、道中ご無事で。山では虎に気をつけなされ。もしも何かあれば、まさに『明日の街頭には旧知の友なし』というものだ」
李定はその言葉を聞いて大いに怒り、言い返した。「何をたわけたことを!良い友というものはいざとなれば生死を共にするものだろうに、なぜそんな縁起でもないことを言う。もしわしが虎に遭って命を落とすなら、お前は波に呑まれて溺れ死ぬがよい」
張梢は笑い飛ばした。「わしは永遠に波に呑まれるようなことにはならぬ」
李定は続けた。「天に不測の風雲あり、人に暫時の禍福あり、という。どうしてお前だけが無事でいられると言えるのか」
張梢は少し真面目な顔をして言った。「李兄、それはそうだが、わしの商いには見通しがある。この長安城の中に、西門の大通りにある卜者がいてな。わしは毎日金色の鯉を一尾届ける。すると先生は袖から一課を伝えてくださり、その方位通りに行けば百回に百回、必ず魚が獲れる。今日もわしは卦を買いに行ったが、涇河の湾の東岸に網を張り、西岸に釣り糸を垂らせば、必ず魚海老を満載して帰れると教えてくださった。明日また城に来る折には、銭を持って酒を買い、兄貴と一杯やろうではないか」二人はそこで別れた。
「路上の語らいは、草の中にも聞く者がいる」とはよく言ったものだ。
実はその涇河の水府には、水を巡回する夜叉がいて、「百下百中」という言葉を聞くや、急いで水晶宮へ戻り、龍王に早口で報告した。「大変でございます!大変でございます!」
龍王が問い返した。「何事だ」
夜叉は言った。「臣が水辺を巡っておりますと、二人の漁翁と樵が話しているのを耳にしました。別れ際に申した言葉が、まことに恐ろしいのでございます。漁翁が言うに、長安城の西門の大通りに卜占の先生がいて、その予言は常に的中するとか。毎日鯉を一尾贈れば、袖から一課を伝えてくださり、百回に百回、必ず獲物があると。もしこのままでは、水の者たちが根こそぎ獲られてしまいます。これでは水府の威光もなく、波を起こし浪を立てて大王をお支えすることもできなくなります」
龍王は怒り、すぐさま剣を手に取り、長安城へ行ってその卜者を斬り捨てようとした。すると傍らから龍子、龍孫、海老の臣、蟹の士、魛の軍師、鳜の少卿、鯉の太宰たちがそろって進み出て申し上げた。「大王、どうかお怒りをお鎮めください。よく言うではありませんか、『耳から入った言葉は、すぐに信じてはならない』と。大王が出向かれれば必ず雲が立ち込め、雨が降り注ぎ、長安の民を驚かせることになります。天からのお咎めを受けることになりましょう。大王には隠れ変化のお力がございます。どうか一人の秀才に姿を変えて長安城へ行き、様子をご覧になってはいかがでしょう。本当にそのような者がいるなら、その時に討っても遅くはありません。もし噂に過ぎないなら、無実の者を傷つけることにもなりましょう」
龍王はこの言葉を容れ、宝剣を収め、雲も雨も起こさずに岸へと上がった。身を揺らし一変すると、白衣の秀才に姿を変えた。その姿は——
豊かな姿は英気にあふれ、 峰を超え空へと伸びるかのよう。 歩みは端正にして礼法に従い、 言葉は孔孟の道を守り、 礼儀は周の文王の風に則る。 身には玉色の羅の衣をまとい、 頭には逍遥の一字巾をいただく。
大路へ出て雲歩を踏み出し、真っすぐ長安城の西門の大通りへと向かった。そこには人だかりができており、喧噪が渦を巻いていた。中から声高に語る者の言葉が聞こえてきた。「龍年生まれの者は本命で、虎年生まれの者とは相克を成す。寅卯巳亥は合局とはいえど、日が歳君を犯すのが恐ろしい……」
龍王はそれを耳にして、ここが卜占の場所だと知れた。人混みをかき分けて中を覗いてみると——
四方の壁には珠玉の飾りが散りばめられ、広間には絹の錦が張り巡らされている。宝鴨の香炉には絶えず香の煙が漂い、磁器の瓶の水は澄みきっている。両側には王維の絵が並び、座上には鬼谷子の像が高々と掲げられている。端渓の硯と金煙の墨は、霜のような白毫の太筆と相まっている。『火珠林』や郭璞の算術が、最新の暦書と向かい合っている。六爻を熟知し、八卦を極めている。天地の理を知り、鬼神の情を読む。一盤の子午は定まり、腹の中には星辰の配列が清らかに描かれている。まことにあらゆる未来事も過去事も月の鏡のように映し出し、興衰の兆しを神明のごとく照らし見る。凶を知り吉を定め、死を断じ生を語る。口を開けば風雨の速さで、筆を下ろせば鬼神も驚く。看板には名前が書かれていた——神課先生、袁守誠。
この人物こそ、当朝欽天監台正の袁天罡の叔父、袁守誠その人であった。先生はいかにも稀なる相貌をして、仙気を漂わせていた。名声は大国に轟き、その術は長安随一とうたわれていた。
龍王は中に入り、先生と挨拶を交わした。礼が済むと先生は龍王を上座に請じ、童子が茶を持ってきた。先生が問うた。「いかなることを卜いますか」
龍王は答えた。「天上の晴れ曇りについて卜っていただきたい」
先生はすぐさま袖から一課を取り出して断じた。「雲は山頂に迷い、霧は梢を覆う。雨について占うなら、明日が確実でございましょう」
龍王はさらに問うた。「明日は何時頃に雨が降り、どれくらいの量が降るのか」
先生が答えた。「明日の辰の刻に雲が広がり、巳の刻に雷が鳴り、午の刻に雨が降り、未の刻に雨が上がります。水量は三尺三寸と四十八点でございます」
龍王は笑って言った。「それは冗談を言っているわけではあるまいな。もし明日本当に雨が降り、おっしゃる通りの時刻と水量であれば、卦料として五十両を差し上げよう。しかし雨が降らなかったり、時刻や水量が違えば、お前の店を打ち壊し、看板を引き裂いて長安から追い出し、二度とここで人々を惑わせないようにしてやる」
先生は落ち着いた様子で答えた。「それで結構でございます。さあ、どうぞお帰りを。明日、雨が上がってからまたお越しください」
龍王は別れを告げて長安城を出、水府へ戻った。大小の水神たちが出迎えて尋ねた。「大王、あの卜者はいかがでしたか」
龍王は言った。「いたぞ、いたぞ。だが口先だけで春を稼ぐ先生にすぎない。明日雨が降るとほざいておったが、時刻と水量まで細かく言い切りおった。辰の刻に雲が広がり、巳の刻に雷が鳴り、午の刻に雨が降り、未の刻に上がり、水量は三尺三寸と四十八点だと。わしはあいつと賭けをした。当たれば五十両を渡す、外れれば看板を打ち壊して追い出してやる」
水族たちは笑った。「大王は八河都総管にして司雨の大龍神。雨が降るか降らないかは大王のみがご存知でございます。あのような者がどうして勝手な言葉を言えましょう。あの卜者の負けは決まったも同然です」
龍子、龍孫、魚や蟹の臣下たちがこの話に笑い興じていたちょうどその時、高空から声が響いた。「涇河龍王、勅旨を受け取れ!」
皆が空を見上げると、金の衣をまとった力士が玉帝の金旨を手に捧げ、まっすぐ水府へ降りてきた。龍王は慌てて衣冠を正し、厳かに香を焚いて勅旨を受け取った。金衣の力士は空へと戻っていった。
龍王は天恩に礼を述べてから封を開いた。そこには次のように記されていた。
勅、八河の総司に命ず、雷を駆り電を走らせよ。 明朝に雨沢を施し、長安城の民を広く潤すべし。
勅旨に記された時刻と水量は、あの先生の言葉と寸分違わなかった。龍王は肝を冷やし、しばし茫然として立ちすくんだ。
やがて正気を取り戻すと、水族たちに言った。「世の中にこれほどの智者がいるとは。本当に天地の理を通じているのだな。これでは負けてしまうではないか」
魛の軍師が進み出て言った。「大王、ご心配なく。あいつに勝つのは造作もないことでございます。臣に一計がございます。あの者の口を黙らせてご覧に入れましょう」
龍王が策を問うと、軍師は言った。「雨を降らせる時刻をずらし、点数を少なくすれば、あの者の卦が外れたことになります。そうすれば看板を打ち壊して追い出せるではありませんか。何が難しいことがありましょう」
龍王はこれを聞いて、もはや心配しなくなった。
翌日、龍王は風伯、雷公、雲童、電母を呼び集め、長安城の九霄の空高くへと遣わした。しかし龍王は意図的に時刻をずらした。巳の刻になってようやく雲を広げ、午の刻に雷を鳴らし、未の刻に雨を降らせ、申の刻に止めた。水量も三尺と四十点に留め、一刻を遅らせ、三寸八点を削ったのである。
雨が上がり、諸将を帰還させてから、龍王は再び雲から降りて白衣の秀士に姿を変え、西門の大通りへ入って袁守誠の卜占の店へと踏み込み、有無を言わさず看板、筆、硯などを一切合切ひっくり返した。
先生は椅子に座ったまま、微動だにしなかった。
龍王はさらに門板を掴み上げて打ちかかりながら罵った。「禍福をでたらめに言い散らす妖人め、人心を惑わす輩め!お前の卦は当たらなかった。今日の雨の時刻も水量も、何一つ合っていなかったではないか。さっさと出て行け、死罪を免じてやるぞ!」
守誠は少しも動じることなく、天を仰いで冷笑した。「わしは恐れない。わしには死罪はない。しかしあなた様の方に死罪があるようですよ。他の者は欺けても、わしは欺けません。あなたが何者かはお見通しです。あなたは秀士などではない、涇河龍王でございましょう。玉帝の勅旨に背いて時刻を変え、点数を削り、天条を犯した。剐龍台での一刀を免れることはできますまい。それなのにここでわしを罵るとは」
龍王はこれを聞いて、魂が飛び、骨の髄まで震え上がった。急いで門板を放り、衣を整えて先生の前にひれ伏した。「先生、どうかお許しください。先ほどの言葉は戯れでございました。まさか冗談が現実になるとは知らず、本当に天条を犯してしまいました。どうかお助けください。さもなければ、わしは死んでもあなたを放しませんぞ」
守誠は静かに言った。「助けることはできません。ただ、生き延びる道を一つお教えすることはできます」
龍王は教えを乞うた。
先生は続けた。「明日の午時三刻、あなたは人曹官の魏徴の手によって斬られることになっています。命を惜しいと思うなら、急いで当今の唐太宗皇帝に訴えるしかありません。魏徴は唐王の駕下の丞相。彼から情けをもらうことができれば、無事でいられましょう」
龍王は礼を述べて涙をこぼしながら別れを告げた。
西の空に日が沈み、月が上ってきた。
煙は山を紫に染め、疲れた鳥は巣へと帰る。 遠い路を行く旅人は旅籠へと急ぐ。 渡し場には新しく来た雁が砂洲に宿り、 天の川が現れ、更に告げる声が響く。 孤村の灯火は頼りなく揺れ、 風に揺れる炉の煙は清い道院に漂う。 蝶の夢の中には人の姿もなく、 月の影は花を連れて欄干の上を移ろい行く。 星の光は散り乱れ、漏刻の音が変わり、 いつしか夜は深く更けていった。
涇河龍王は水府へは戻らず、ただ空中に漂っていた。子の刻の頃を待ち、雲の頭を収め、霧の角を引き込んで、まっすぐ皇宮の門前へ向かった。
ちょうどその時、唐太宗は夢の中で宮門の外へ出て、花の蔭に月光を浴びながら歩いていた。すると突然、龍王が人の姿に変じて前に進み出て跪き、叫んだ。「陛下、お助けください、お助けください!」
太宗は言った。「そなたは誰か。朕が救ってやろう」
龍王は言った。「陛下は真の龍、臣は業の龍でございます。天条を犯し、陛下の賢臣、人曹官の魏徴の手によって斬られる定めとなりました。どうかお助けいただきたく、こうしてお願いに参りました」
太宗は言った。「魏徴が斬るというのなら、朕が救ってやれる。安心して行くがよい」
龍王は喜び、叩頭して礼を述べて去っていった。
太宗が夢から覚めると、その言葉が心に刻み込まれていた。五更三点の鐘が鳴り、太宗は朝廷に出て文武百官を集めた。
煙は鳳の殿を包み、香は龍の楼に満ちる。 光は赤い屏に揺れ動き、雲は翠の旗の上を流れる。 君と臣は尭舜の如く心を通じ合わせ、 礼楽の威儀は漢や周の風に近い。 侍臣の灯、宮女の扇、二つ二つに彩りを映し、 孔雀の屏風、麒麟の殿に、いたる所光が漂う。 万歳の声が山の如く響き、千秋の慶賀が続く。 静鞭が三度鳴り響き、衣冠を正した臣下が冕旒に拝する。
衆官が朝賀を終えてそれぞれの位置に就いた。唐太宗は鳳の瞳、龍の眼差しで一人ひとりを端から見渡した。文官の中には房玄齢、杜如晦、徐世績、許敬宗、王珪らがおり、武官の中には馬三宝、段志玄、殷開山、程咬金、劉洪紀、胡敬徳、秦叔宝らが威儀を正して並んでいた。しかし魏徴丞相の姿だけが見当たらなかった。
太宗は徐世績を呼んで問うた。「朕は昨夜、不思議な夢を見た。夢の中で一人の者が前に出て拝謁し、自分は涇河龍王で天条を犯した、人曹官の魏徴に斬られる定めになっている、どうか助けてほしいと言った。朕はすでに承知した。しかし今日の朝廷に魏徴だけがいない。これはいかなることか」
世績は答えた。「その夢はまさに的中しております。魏徴を呼んで朝廷に参上させ、陛下は今日一日、彼を宮から出さないようになさいませ。そうすれば夢の中の龍をお救いできるでしょう」
太宗は大いに喜んで、すぐに旨を伝えて魏徴を呼び入れた。
一方、魏徴丞相は邸宅で夜の天象を観測していた。宝香を焚いてしばらくすると、九霄から鶴の鳴き声が聞こえ、天帝の使者が玉帝の金旨を持って降りてきた。午時三刻に夢の中で涇河の老龍王を斬るよう命じる旨が記されていた。
丞相は天恩に感謝し、斎戒沐浴して邸宅の中で慧剣を試し、元神を練っていた。それゆえ朝廷に入らなかったのである。当驾官の宣旨が来ると、畏れ多く思いながらも君命に背くことはできず、急いで衣帯を整えて旨と共に朝廷へ向かい、御前に跪いて罪を請うた。
太宗は言った。「罪は許す」
その後しばらく他の臣下たちも残っていたが、太宗はやがて廉を捲いて朝を散じた。魏徴だけを留めて金殿に呼び上げ、便殿に迎え入れ、まず安邦の策と定国の謀について語り合った。
巳の刻も末となり、午の刻に差し掛かろうとした頃、太宗は宮人に命じた。「碁盤を持ってきなさい。朕は賢卿と一局打とう」
嫔妃たちが棋盤を持ってきて御案に敷いた。魏徴は恩に感謝し、太宗と向かい合って碁を始めた。一手、また一手と打ち、陣形が展開されていった。
ちょうど《爛柯経》に言う如し——
博弈の道は、厳謹を尊ぶ。 高処は腹に在り、低処は辺に在り、中間は角に在り。 これが碁打ちの常法なり。 法に言う、「一子を惜しむより、先手を失うな」と。 左を撃てば右を視よ、後ろを攻めれば前を瞻よ。 先にして後あり、後にして先あり。 二つの生は断つべからず、皆活きたれば連ぐべからず。 広すぎてはならぬ、密すぎてもならぬ。 子を惜しんで生を求めるより、捨てて勝ちを取る方が良く、 無事に一人歩きするより、堅めて自ら補う方が良い。 彼衆われ寡なれば、まず生を謀れ。 われ衆彼寡なれば、勢いを張ることに努めよ。 善く勝つ者は争わず、善く陣する者は戦わず、 善く戦う者は敗れず、善く敗れる者は乱れず。 碁は始めは正を以て合し、終わりは奇を以て勝つ。
詩に言う——
碁盤は地となし、碁石は天となす、 色は陰陽、造化の全てを按配する。 玄妙の変化に至れば、 柯が爛れた仙人の昔日を笑い誇る。
君臣二人が向かい合って碁を打つうちに、午時三刻となった。盤上の一局はまだ半ばであったが、突然魏徴が案に突っ伏し、ぐっすりと眠り込んでしまった。
太宗は微笑んで言った。「賢卿は誠に、社稷を支える心が労され、江山を創り立てた力が疲れているのだな。だから思わず眠ってしまったのだろう」
太宗は魏徴が眠るのにまかせ、呼び起こすことはしなかった。
しばらくして魏徴が目を覚ますと、地に伏してひたすら謝罪した。「臣は万死に値します、万死に値します!先ほどは疲れに打ち負けて知らぬうちに眠ってしまいました。どうか陛下、臣の無礼をお許しください」
太宗は言った。「何の無礼があろうか。さあ起き上がって、残った碁石を片付け、もう一局打ち直そう」
魏徴が恩に感謝しながら碁石を手に取ろうとした時、突然朝門の外が騒がしくなった。秦叔宝と徐茂公らが、血に濡れた龍の首を持ち込み、皇帝の御前に投じて申し上げた。「陛下、海が干上がり川が涸れることはあっても、このような不思議な出来事は聞いたことがございません」
太宗と魏徴が席を立って問うた。「これは何だ」
叔宝と茂公は答えた。「千歩廊の南、十字路の上の雲の中から、この首が落ちてきたのでございます。臣どもは奏上せずにはいられませんでした」
太宗は驚いて魏徴に問うた。「これはいかなることか」
魏徴は振り返って叩頭し、申し上げた。「臣が先ほどの夢の中で斬ったのでございます」
太宗は驚きを禁じ得なかった。「賢卿が眠っていた時、体も動かず手も動かず、刀剣も持っていなかった。それなのにどうしてこの龍を斬ることができたのか」
魏徴は申し上げた。「主公、臣の身は君前にあり、夢は陛下の傍を離れました。身は君前にあって残局に向かい、目を閉じて朦朧とし、夢は陛下の傍を離れて瑞雲に乗り、元神が振るい立ちました。あの龍は剐龍台の上に天兵たちに縛られておりました。臣は申し渡しました、『お前は天条を犯した、死罪は免れぬ。天命を奉じてお前の命を斬る』と。龍は哀れに訴え、臣は精神を振るわせました。龍は哀れに訴えて、爪を収め鱗を伏せて死を甘んじて受け、臣は精神を奮い立てて、衣を捌いて進み出て霜の刃を振り上げました。一声轟いて刀が過ぎ去り、龍の首はかくして空に落ちたのでございます」
太宗はこれを聞いて、心の中に悲喜が入り交じった。喜びは、魏徴という豪傑がいる限り、江山が揺らぐ心配はないということ。悲しみは、夢の中で龍を救うと約束しておきながら、結局は誅殺することになってしまったということであった。
太宗は気持ちを奮い立たせ、旨を伝えて叔宝に龍の首を市中に晒させ、長安の民に知らしめた。一方で魏徴に褒美を賜り、百官を散じた。
その夜、宮に戻ってからも、太宗の心は晴れなかった。夢の中で哀れに命乞いをしていた龍のことが脳裏を離れない。思い続けるうちに、いつしか魂が揺らぎ、体の具合が悪くなってきた。
その夜、二更の頃、宮門の外から泣き叫ぶ声が聞こえてきた。太宗はますます恐れおののいた。まどろみかけたちょうどその時、また涇河龍王が現れた。血に濡れた首を手に提げ、高らかに叫んだ。「唐太宗!わしの命を返せ!命を返せ!お前は昨夜、口を開けて助けると約束しておきながら、夜明けになって人曹官を呼んで斬らせたではないか。出てこい、出てこい!閻魔王の前でとっくりと白黒をつけてやる!」
そして太宗の衣を掴み、しつこく喚き続けて放そうとしなかった。太宗は口を開くことができず、汗が全身に滲み流れるだけであった。
まさに抜き差しならぬその時、南の方角から香雲が巻き上がり、彩の霧が漂い始めた。一人の女真人が進み出て、楊柳の枝を手に振ると、首のない龍は悲しみの声を上げながら、そのまま北西へと去っていった。
これは観音菩薩が仏の旨を受けて東土に取経者を探しに来られ、長安城の土地廟に宿っておられた折に、夜の鬼泣き神号の声を聞いて特に業龍を喝退し、皇帝をお救いになったのである。龍はそのまま冥界へと向かった。
太宗が正気を取り戻すと、ただ「化け物だ!化け物だ!」と叫ぶばかり。三宮の皇后、六院の嫔妃、近侍の宦官たちは皆、戦々恐々として一夜を明かした。
五更三点になると、朝廷の文武百官がみな朝門の外で待機していた。夜が明けても太宗が現れないので、皆が不安に思い途方に暮れていたが、やがて旨が出た。「朕は体調が優れない。臣下は朝廷を免除とする」
気がつけば五、七日が過ぎていた。臣下たちは心配して問安に押しかけようとしていたところ、太后からの旨が出て、医官を宮中に呼び入れて治療に当たらせた。臣下たちは朝門の外で知らせを待ちわびた。しばらくして医官が出てきたので、皆が病状を尋ねた。
医官は言った。「皇上の脈は正常ではなく、虚でありながらかつ速い。うわごとを言い、幻を見ておられます。また脈に十動一代の兆しがあり、五臓の気が消えつつあります。七日以内が御命に関わる時となりましょう」
臣下たちはこれを聞いて顔色を失った。
慌ただしい中、また太后の旨が届き、徐茂公、護国公、尉遅恭を御前に召した。三公は旨を奉じて急いで分宮楼の下へ入った。礼を終えると、太宗は努めて平静を装いながら言った。「賢卿よ、朕は十九歳で兵を率いて以来、南征北伐を繰り返し、幾年もの苦難を経てきたが、これまでただの一度も邪の怪を見たことはなかった。しかるに今日に至って、鬼を見るとは」
尉遅恭は言った。「江山を切り開くために幾万もの命を奪ってきた。今更何の鬼を恐れましょうか」
太宗は言った。「そなたには信じられぬかもしれぬが、朕の寝宮の門の外では、夜になると煉瓦や瓦が飛んで、怪しい声が叫ぶ。昼の間はまだしも、夜になると到底耐えられない」
秦叔宝が言った。「陛下、どうかご安心ください。今夜は臣と敬徳が宮門を守りに立ちましょう。どんな化け物が出るか見てやります」
太宗はこれを許した。茂公は恩に感謝して退出した。
日が暮れると、秦叔宝と尉遅敬徳の二人は完全な武装を整え、金の瓜と鉞斧を手にして宮門の外に立った。
頭には金の兜、光り輝き、 身には鎧甲、龍鱗の如し。 護心の宝鏡は吉祥の雲を照らし、 獅子の紋様の留め具をしっかりと締め、 刺繍の帯に彩霞が新しい。 一人は鳳の眼で天を仰ぎ、星斗をも怯えさせ、 もう一人は環の目に電光を映し、月の光を浮かべる。 その昔は英雄豪傑として功績を立てた臣下が、 今は千年に渡り門の衛兵として称えられ、 万古の世に渡り門神として祀られる。
二将軍が門の傍らに立ち続けて、夜が明けるまで、一点の邪怪も現れなかった。その夜、太宗は宮の中で安らかに眠ることができた。夜明けに二将軍を呼んで厚く褒美を与え、言った。「朕は病に罹ってから数日、眠ることができなかった。今夜は二将軍の威勢のおかげで安眠できた。そなたたちはしばし退がってお休みなさい。夜になったらまた警護をお願いしたい」
二将は恩に感謝して退出した。
こうして二、三夜の警護はいずれも穏やかであった。しかし御膳は日に日に減り、病状はかえって重くなっていった。太宗は二将に夜通し苦労させることを忍びなく思い、叔宝、敬徳と杜如晦、房玄齢らの諸公を宮中に呼んで言った。「ここ数日、そなたたちのおかげで安眠できているが、秦、胡の二将軍が夜通し苦労しているのが気の毒でならない。巧みな絵師を召して二将軍の真の姿を写し取り、門に貼り付けることにしてはどうか。そうすれば彼らを苦しめずに済む」
臣下たちは旨に従い、絵師を二人呼んで、胡、秦の二公が武装を整えた姿をそのままに描かせ、門に貼り付けた。その夜も何事もなかった。
そのようにして二、三日が過ぎると、今度は後宰門の方からポンポンと煉瓦や瓦の音が聞こえてきた。夜明けに太宗は臣下たちを呼んで言った。「前の門は秦と胡の二将が守ってくれて幸いにも無事だったが、今夜は後ろの門が騒がしくなった。これでは再び朕を苦しめることになる」
茂公が進み出て申し上げた。「前の門が落ち着かない時は敬徳と叔宝が守りました。後ろの門が落ち着かないなら、魏徴が守るべきでございましょう」
太宗はこれを許し、魏徴に今夜後ろの門を守るよう旨を伝えた。魏徴は旨を受けてその夜、身支度を整え、龍を誅した宝剣を手に後宰門の前に立った。その姿は——
熟した絹の青巾で額を包み、 錦の袍に玉の帯を腰に垂らす。 風をはらんだ外套の袖には霜が舞い、 荼の神の威貌を圧倒する。 脚には黒い靴を履いて折り敷き、 手には鋭い刃を持って猛々しく立つ。 丸く見開いた両目で四方を見渡す—— いかなる邪神がここへ近づけようか。
夜通し燭台は煌々と輝き、一切の鬼怪は現れなかった。前後の門は共に静まったが、太宗の体はますます重くなっていった。
ある日、太后がまた旨を伝えて臣下たちを呼び集め、葬儀の後事を相談させた。太宗は徐茂公を呼んで国の大事を申し付け、昔の劉蜀主が孤児を托した故事に倣うよう念を押した。言い終えると、沐浴して衣を改め、ただ時を待つばかりとなった。
そこへ傍らから魏徴が進み出て、龍の衣の袖を引きながら申し上げた。「陛下、どうかお心をお静めください。臣に一計がございます。必ずや陛下のお命をお救い申し上げます」
太宗は言った。「病は既に膏肓に入り、命は今や風前の灯火。どうしてお救いいただけようか」
魏徴は言った。「臣に一通の書状がございます。陛下にお持ちいただき、冥界の酆都判官、崔珏殿に届けていただきたいのです」
太宗は問うた。「崔珏とは誰か」
魏徴は申し上げた。「崔珏は太上先皇帝の御前の臣で、もとは滋州の令を受け、後に礼部侍郎に昇りました。生前、臣と八拝の交わりを結び、互いに深く知り合っておりました。今は亡くなり、冥界にて生死の文簿を管る酆都判官を務めております。夢の中でよく臣と語り合っています。この書状を彼に渡していただければ、臣との縁を思って必ず陛下をお帰しくださいましょう。魂魄を現世に戻し、必ずや龍顔を再び帝都に取り戻してご覧に入れます」
太宗はこれを聞いて書状を手に取り、袖の中にしまいこんだ。そして目を閉じて、息絶えた。
三宮六院の皇后、嫔妃、世継ぎの君主、文武の百官が皆、喪に服して哀悼を捧げた。そして白虎殿の上に梓の棺を安置した。
唐太宗がいかにしてよみがえるかは、次の回をお聞きになられたい。